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ISO9001のmapping3 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.99 ■□■

*** ISO9001のmapping3 ***

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■□■ 箇条8.3の細分箇条 ■□■

前回に続き、下記の細分箇条をどこへmappingするのが適切かの話をいたします。

8.3.1 一般
8.3.2 設計・開発の計画

■□■ 細分箇条 8.3.1 一般 ■□■

「組織の製品及びサービスの詳細な要求事項が確立されていない場合、またはそれら
がそれ以降の製品若しくはサービスの提供に十分であることが顧客若しくはその他の
利害関係者によって明確にされていない場合には、組織は,設計・開発プロセスを確
立し、実施し、維持しなければならない。」

前回のmappingの手順に沿って説明します。

1.規格の要求事項を理解する

この箇条は2015年版の特徴である「サービス業への配慮」の一つであると言われてい
ます。

2008年版では設計・開発の要求は前提なくすべての組織への要求でした。そのうえ
で、組織に設計という実務がなければ「除外」することが認められていました。

2015年版では、もしも組織が「組織の製品及びサービスの詳細な要求事項を確立して
いる,または,それらがそれ以降の製品若しくはサービスの提供に十分であることが顧
客若しくはその他の利害関係者によって明確にされている」場合は、設計・開発のプ
ロセスは存在しなくてよい、というのがここでの規格の理解です。

2.箇条4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」のinput、outputなどに
mappingする

次は手順の2になりますが、さてこの設計・開発に関する要求は次のどこへmapping
するのが適切でしょうか?

a) input、output
b)省略
c)判断基準、方法(測定を含む)
d)資源
e)責任権限
f)リスク、機会
g)監視、測定
h)改善

そもそも組織に設計実務がない場合には、「QMSに必要なプロセス」として設計プロ
セスが特定されてきません(この場合は、適用不可能ということになる・・・箇条4.
3を参照すること)。ここでの要求は、設計・開発プロセスを確立する場合に、それ
を実施し、管理することを要求事項していますので、mappingする先は、設計プロセ
スのinputが適切であると考えます。

3.mappingした内容を貴社の具体的内容に置き換える

貴社の具体的内容に置き換えるという手順ですが、設計プロセスを実施し、管理する
ことの具体的な内容があれば置き換えをしてください。とくに具体的内容がない場合
は無理に置き換えすることはありません。

■□■ 細分箇条 8.3.2 設計・開発の計画 ■□■

次の事例に行きます。設計・開発の細分箇条8.3.2です。
「設計・開発の段階及び管理を決定する際に,組織は、次の事項を考慮しなければな
らない。

a)設計・開発活動の性質,期間及び複雑さ

b)適用される設計・開発のレビューを含め、特定のプロセス段階を規定する要求事項

c)要求される設計・開発の検証及び妥当性確認

d)設計・開発プロセスに関する責任及び権限

e)設計・開発プロセスに関与する個人及び関係者間のインタフェースの管理の
必要性

f)設計・開発プロセスへの顧客及びユーザーグループの関与の必要性

g)設計・開発要求事項が満たされていることを確認するために必要な文書化
した情報

今までと同様、mappingの手順に沿って説明します。

1.規格の要求事項を理解する

設計プロセスでポイントとなることをa)~g)まで7項目にわたって考慮事項として要
求しています。ここで、ISOにおける「考慮:consider」という用語は「考慮した結
果実施しないこともあり得る」という解釈になっております。

2.箇条4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」のinput、outputなどに
mappingする

内容からいって、設計プロセスの「c.判断基準、方法」にmappingすることが適切
であると考えます。

3.mappingした内容を貴社の具体的内容に置き換える

貴社が、もし家電メーカーであるとしたならば、どのような具体的内容がありえる
か具体例を考えてみます。

a) 設計・開発活動の性質、期間及び複雑さ

→ 貴社の「設計の段階」(原文はstagesとあり設計のステージを意味いっている)を明確にする。設計の管理について具体的なことがあれば明確にする。

b) 適用される設計・開発のレビューを含め、C特定のプロセス段階を規定する要求事項

→ 設計レビューを実施するのであればその旨を明確にする。もし実施しないのであれば、そのことを明確にする。

c) 要求される設計・開発の検証及び妥当性確認

→ 設計検証を実施するのであればその旨を明確にする。もし実施しないのであれば、そのことを明確にする。設計の妥当性確認も同様である。

d) 設計・開発プロセスに関する責任及び権限

→ 責任者を明確にする。

e) 設計・開発プロセスに関与する個人及び関係者間のインタフェースの管理の必要性

→ 設計部署のコミュニケーションについて明確にする。

f) 設計・開発プロセスへの顧客及びユーザーグループの関与の必要性

→ 顧客及びユーザーグループの設計への関与について必要性の有無について明確にする。

g) 設計・開発要求事項が満たされていることを確認するために必要な文書化した情報

→ 文書名、文書番号を明確にする。

以上はあくまでも例ですので、このようなイメージで規格要求事項を貴社の具体的事項に
置き換えてください。

以上

ISO9001の写像2 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.98 ■□■
*** ISO9001の写像2 ***
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■□■ISO9001要求事項のMappingの仕方■□■
前回は写像という言葉を使いました。

案の定難しいという反応がありましたので、
今回からはmappingという言葉に変更します。

「写像」とmappingではニュアンスが異なりますが、
行うことの目的は同じですのでmappingでよいかと思います。

ISO9001要求事項を組織のプロセスに
mappingする手順は次の通りです。

このmappingを通じて、
「事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合」
することが可能になります。

1.規格の要求事項を理解する。
2.箇条4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」の
input、outputなどにmappingする。
3.mappingした内容を貴社の具体的内容に置き換える。

■□■input、outputなど■□■
ISO9001:2015箇条4.4では、mappingされる先を、
それぞれのプロセスのinput、output以外、
次の多くのものを指定しています。

a)input、output
b)省略
c)判断基準、方法(測定を含む)
d)資源
e)責任権限
f)リスク、機会
g)監視、測定
h)改善

ここでb)を省略としたのは、「順序及び相互作用」は
フローチャートで示すことの方が効果的であるからです。

■□■「QMSに必要なプロセス」と「事業プロセス」■□■
上述した
「事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合」
という要求は、ISO9001:2015箇条5.1.1 d)にあります。

箇条4.4も品質マネジメントシステム要求事項ですから、
4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」は
事業プロセスに統合されたものでなければなりません。

すなわち、事業プロセスから、QMSに必要でないと
組織が判断して削除して残ったものが「QMSに必要なプロセス」です。

■□■では事例を示します■□■
簡潔明瞭な事例は、
「8.3 製品及びサービスの設計・開発」において示すことができます。

まず、「8.3.3 設計・開発へのインプット」です。

「組織は,次の事項を決定しなければならない。
a)該当する場合には、機能及び性能に関する要求事項を含めた、
設計・開発される特定の種類の製品及びサービスに不可欠な要求事項
b)適用される法令・規制要求事項
c)組織が実施することを約束している、実践の基準又は規範
d)製品及びサービスの設計・開発に必要な内部資源及び外部資源
e)製品及びサービスの性質によって起こり得る故障の影響
f)顧客及びその他の利害関係者によって期待される、
設計・開発プロセスの管理レベル

インプットは,設計・開発の目的に対して適切で、漏れがなく、
曖昧さのないものでなければならない。

インプット間に相反するものがあるときは、
これを解決しなければならない。」

この要求事項は、組織の設計プロセスのinputにmappingすることに
なります。

同様に「8.3.5 設計・開発からのアウトプット」は、
組織の設計プロセスにoutputにmappingします。

「組織は、設計・開発からのアウトプットが、次の状態であることを
確実にしなければならない。

a)設計・開発に関するインプットの要求事項を満たす。
b)製品及びサービス提供に関するそれ以降のプロセスに対して
適切である。
c)監視及び測定の要求事項、及び該当する場合には、
合否判定基準を含むか、又はそれらを参照している。
d)製造される製品、又は提供されるサービスが、意図した目的、
及びそれらの安全で適切な使用に適していることを確実にする。

組織は、設計・開発プロセスの結果として生じた、文書化した情報を
保持しなければならない。」

■□■mappingするときのポイント■□■
mappingするときに一つ重要なポイントがあります。

貴社でmappingした内容を組織の具体的なinput、outputに
置き換えることが重要です。

例えば、inputのb)には「適用される法令・規制要求事項」と
ありますから、もし貴社が食品会社でしたら
「食品衛生法」にある規制事項を掲げることになります。

ISO9001規格は一般的にしか規定していませんから、
貴社の具体的な内容に置き換えなければなりません。

ここで疑問が生じると思います。
「適用される法令・規制要求事項」といっても
食品衛生法以外多くの関係する法律があるが
いくつ位特定しなければならないのか?

また、ISO9001規格の要求は「法令・規制要求事項」であって、
法律名を要求しているわけではないが、どうすべきか?

などの疑問が出てくるものと思います。

箇条4.4の最後には次のように書かれています。

「組織は、プロセスの運用を支援するために必要な程度の、
文書化した情報を維持し、かつ、プロセスが計画どおりに
実施されたという確信をもつために必要な程度の、
文書化した情報を保持しなければならない。」

そうです、プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために
必要な程度でよいのです。

結局貴社が、自分自身の現状を踏まえる中から、
この「必要な程度」が決まってくるのです。

次回は、箇条8.3の触れなかった以下の細分箇条について説明をします。
8.3.1 一般
8.3.2 設計・開発の計画
8.3.4 設計・開発の管理
8.3.6 設計・開発の変更

以上

ISO9001の写像 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.97 ■□■
*** ISO9001の写像 ***
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■□■ 写像とは■□■
今回はすみませんが、少々難しい話をします。

表題にある「写像」とは、数学分野で、
「二つの集合が与えられたときに、一方の集合の各元に対し、
他方の集合のただひとつの元からなる集合を指定して
結びつける対応」のことです。

この写像という言葉は、流体力学の分野では、
「複雑な形状周りの流れは、等角写像により簡単な流れに
焼き直すことができる」というように応用されています。

例えば、円柱周りの流れの諸特性(流速や圧力の分布)
が判れば、翼周りの流れが解明できます、という意味です。

円柱周りの座標点と翼周りの座標点の相互関係
(変換関係)が論理的に(この場合数式で)示せれば、
解析が容易な円柱周りの流れの解析結果から、
論理的に翼周りの流れの解析結果を導くことが
できるということです。

■□■ 何を言いたいのか?■□■
急に日常ほとんど使われない「写像」などという
難解な言葉を出してしまってすみません。

複雑な問題と簡単な問題との相互変換関係が
論理的に示すことができれば、簡単な問題に対して
整理され認識された物事は、その変換を通じて
複雑な問題に焼き直して事象を認識することができるのです。

この変換を写像というのですが、
影像あるいは映像も近い言葉でしょう。

英語では写像をmappingといっています。
影像はimagingですね。

ISO9001規格の要求事項を組織のプロセスに写しだすと
どんな像が結ばれるのかを確認してQMSを運用することを
お勧めします。

■□■ どのように写像するのか ■□■
決まったやり方はありませんが、次のような順序で
写像するとよいのではないでしょうか。

1.ISO9001:2015規格が何を要求しているのか
正しく理解する。

2.要求事項が自身の組織のどの事業プロセスに
関係しているか考えてみる
(規格要求事項を事業プロセスに写してみる)。

3.自身の事業プロセスで実施している事柄と
規格要求事項とのギャップを考える
(事業プロセスに結ばれた像に欠落しているものは
何か考える)。

4.ギャップとして摘出された項目を構築し、実施、
維持していくシステムを計画する。

5.システムを組織の中で運用していく。

■□■ 事業プロセスとは ■□■
上記説明で「事業プロセス」という言葉を使いましたが、
これはISO/DIS9001:2015に出てくる言葉です。

「5.リーダーシップ及びコミットメント

5.1 品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ
及びコミットメント

トップマネジメントは,次に示す事項によって,
品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及び
コミットメントを実証しなければならない。

d) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム
要求事項の統合を確実にする。」

なぁ~んだ、写像なんてもっともらしい言葉を使っているが、
2015年改正規格の要求事項にある、事業プロセスに
規格要求事項を統合することを意味しているのではないか、

特別のことを言っている訳ではない、と思われるでしょう。

そうです、そのとおりですが、
では貴方の組織の事業プロセスは明確になっているでしょうか?

■□■ マルコムボルドリッジ賞の事業プロセス ■□■
アメリカには大統領が表彰するというMB賞があります。

この賞は、組織の顧客からの評価に焦点を合わせ、
組織のパフォーマンスを評価するという点で、
ISO9001の認証制度とは異なる視点で運用がされています。

このMS賞のプロセス評価基準になっているものに、
米国生産性品質センター
(APQC:American Productivity and Quality Center)が
発表している「Process Classification Framework」があります。

ここには多くの事業プロセスの記載があります。

組織で行われている標準的な業務のベストプラクティスを調査し、
ベンチマーキングするための基準としての事業プロセスを
定義しています。

組織の業務を大きく12の事業カテゴリーと、
これをさらに細分化した250の事業プロセス、
および650の活動に分類しています。

URLは https://www.apqc.org/pcf ですので
参考にしてください。

以上

チュニジアの惨劇 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.96 ■□■
*** チュニジアの惨劇 ***
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■□■ 昨年の品質に関する講演 ■□■

皆さんすでにご存じのようにチェニスで日本人が
3人犠牲になりました。

昨年の11月に当地で品質に関する講演をしただけに、
あのきれいな自然豊かな環境の中であのような血を流すテロが
行われることに複雑な思いを抱いています。

テロの背景(イスラム国)にはいろいろあるのでしょうが、
今言えることは地球が狭くなり、誰でも被害者になる可能性が
あるということです。

飯塚先生のご紹介で昨年11月13日、
チェニスの今回の惨劇の場所となった国立博物館の近くのホテルで
「アカウンタビリティと品質」の講演をしました。

チュニジアでは、ISO9001の認証についてはあまり普及しておらず、
組織の製品・サービスの品質を保証することに関しての関心が
より強かったように思います。

アカウンタビリティは、社会的な正義に関してのトピックスであり、
製品、サービスの品質もそれに関係するという観点からの
Quality Dayの講演の一幕を担当させてもらいました。

■□■ How to preserve the rules ■□■

How to preserve the rules of quality and social accountability?
が昨年の私の講演のタイトルでした。

その趣旨は、組織の全員が決められたルールを守るには
どのようにしたら良いのか、というものです。

ISO9001もISO14001も今年の9月に改正版が出される予定で
規格作成が進んでいますが、
システムの本質には全員でルールを守るというものがあります。

チュニジアでは、マネジメントシステムというよりも
今生産している製品の品質を如何に顧客の期待に合致させるか、
が問われている、

そのためには全員が品質を作り込むという責任を守らなければならない、
という状況がひしひしと伝わってきました。

翻って、日本ではどうかといいますと、
システム認証が花盛りです(というほどでも今はないか?)が、
システムがあれば製品の質がよくなるかというと、
今までの実績が示すように必ずそうはなっていません。

ISO9001もISO14001も改正版は、附属書SLに基づいていますが、
附属書SLはシステムの前提である「全員がルールを守る」という
最も重要な基本について明示的な要求はしていません。

もちろん、「管理された状態で・・・」という表現が
ルールを守ることを示唆しています。

が、直接的な言い方をしていないので、
この重要な要件を忘れていると、
思わぬ事故を引き起こす基になることを忘れてはなりません。

以上

附属書SLの理解1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.90 ■□■
*** 附属書SLの理解 ***
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■□■ ISO9001を例として ■□■

 箇条4.「組織の状況」は、附属書SLの特徴とし特記されるべき部分で、
組織がどのような背景でXXXマネジメントシステムを構築するのかに関する
要求です。

XXXを「品質」としてISO/DIS9001を例にとって解説したいと思います。 

■□■ 4.1「組織及びその状況の理解」■□■ 

 「その品質マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に
影響を与える、外部及び内部の課題を決定しなければならない」という
要求事項が出てきます。

このあたりはリアリティである実態の組織ではどこでも分析していることです。

課題のない組織はありません。
もしあれば、そのような組織はきっと長くは存続できないでしょう。

ISOはマネジメントシステムなので、
現在の良いレベルを今後も続けていくことを目的としています。

ISO9001の意図する成果とは、組織全員で製品の質をベストの状態に保ち、
お客様へ提供する製品の質に取り組むことにあります。

意図した成果は、不良率を減らす、お客様からのクレームを減らす等、
組織の事業年度で決めているものと一致するはずです。

つまり、「4.1」では、組織がいま進めていることを
そのまま書けばいいということになります。

■□■ 4.1「外部、内部の課題」■□■

 外部や内部のさまざまな問題を明確にしておくことも要求されています。

共通テキストには、「組織の能力」という用語がでてきます。
能力は、組織の人々、あるいは機械、エネルギー、建物、
マネジメント等にあるものです。

プロセスも能力を持っています。
この能力に影響を与える要因を決めておくことが要求事項にはあります。

人が変わる、機械が古くなる、劣化する等、いろいろな意味で
能力に影響する課題を決めておく必要があるのです。

ISOでは、外部及び内部の課題は、
組織が目的とする範囲内でかまわないと定義し、
それを越える課題を取り上げることは要求していません。

組織の能力に影響を与える外部課題としては、
法令規制などを上げることができます。

いろいろな法律、例えば建築基準法が変わり耐震性が強化されますと、
いままでの能力では対処できないことが出てきます。

内部課題では、組織変更、教育、予算、人材の入れ変わり、
レイアウト変更、要員の力量、技術力劣化、検査検出力、
お客様満足の把握、欠勤、処遇、定年等、いろいろなものが想定できます。

■□■4.2「利害関係者のニーズ及び期待の理解」■□■ 

 いままでの要求になかった利害関係者を
はっきりさせることが求められています。

これも、
お客様が何を期待しているのかをはっきりさせればいいことなので、
新たに文書を作る必要はありません。

利害関係者には、例えば直接のお客様と最終利用者、
下請けや部品メーカー、規制当局等が考えられます。

ISO14001では、顧客、地域住民、供給者、規制当局、非政府組織、
投資家、従業員が含まれるかもしれません。

このなかでは、
働いている人々が一番身近な利害関係者かもしれません。

その方々が質を担保するのだから、従業員がモチベーションを
保てなければ成果は上がらないということになります。

■□■4.3「 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」■□■ 

 適用範囲は、いままでなら○○株式会社、○○工事、
○○建設○○事務所、全社等、カバーする範囲が
証明書に書かれているだけでした。

それが今回から、「4.1」で規定する外部及び内部の課題と
「4.2」で規定する利害関係者のニーズを考慮して適用範囲を
組織が自身で決めることが求められているのです。

自ら組織の目的に照らし、あるいは利害関係者に
配慮して決めるわけですから、限定した部署だけに
適用させてもいいのか、迷うところです。

ISO9001は法律ではなく、民間の自主規制、仕組みと
考えられますから、まずは組織が自分の状況に基づいて
必要であると考える範囲に適用することでよいのです。

その後、継続的に改善していけばよいと考えましょう。

4.3には
「その境界及び適用可能性を決定しなければならない」
と書かれています。

ある要求事項に該当することが組織に存在しなく、
適用しなくても目的を保証できるならば規格は
該当する要求事項を自身の判断で外すことができます。

ただし、意図的に外すことは認められません。

「4.1」と「4.2」を考慮すれば当然恣意的な不適用は
できないはずでしょう。

■□■4.4「 品質マネジメントシステム」■□■

 「組織は、この規格の要求事項に従って、
必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む」という内容は、
現行の規格にもあります。

ISOの規格は使い手次第ともとれる内容だが、
他社との差別化を目指すのであれば、
この部分を戦略的に考えるべきでしょう。

プロセスアプローチを具体的にどのように展開するのか
次期ISO9001規格の一つの大きなポイントです。

規格はQMSに必要なプロセスにa)~h)を決定することを
求めています。

以上