タグアーカイブ: ISO9001

マネジメントシステムの原点に返る | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————-
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.89■□■
*** マネジメントシステムの原点に返る ***
—————————————————–
■□■ 附属書に基づく改正は大きな改正か? ■□■

 附属書SLについてもう一度整理してみたいと思います。

2015年に予定されている附属書SLに基づくISO9001、
ISO14001の改正は、「マネジメントシステムの原点に返る」
というところに見るべきところがあると思います。

 よく2015年改正はどの程度大きな改正か?
と聞かれますが、それは組織が原点につながる活動をしていた、
または原点から離れた活動をしていたかによると思います。

 前者の組織は2015年改正をそれほど大きな改正とは
感じないでしょうが、
後者の組織には大きな改正と映るのではないかと思います。

■□■ マネジメントシステム規格の原点 ■□■

 マネジメントシステム規格は、
1987年に発行されたISO9001規格をその原点としていますが、
それは「顧客ニーズにあった製品を一貫して供給する」
ということでした。

 顧客ニーズに合致した製品を供給するには、
組織に能力がなければなりません。

 ISO9001:2000には規格を使う目的として
2つの適用範囲を示しています。

a)顧客要求事項及び法的要求事項に合致した
 製品・サービスを一貫して供給する能力を実証する。

b)顧客満足を継続的に改善する。

 ISOマネジメントシステム規格の目的は、
例えばISO9001では組織を取り巻く環境が変わっても
事業が継続し、お客様から求められる製品・サービスの
“質”を問題なく提供するための能力を持つことにあります。

 能力を持つことで
組織は持続的に社会に存在し続けることができるのです。

 そのような仕掛けをしておかないと組織はいつ思わぬ問題に
遭遇し最悪の場合存在できなくなるかわかりません。

■□■総てに共通な要素:能力を持つ■□■

 この能力を持つということはISO9001に限りません。

 経営の総てに通じる共通のことです。

 経営の原点は、
他社にない差別的な競争優位なポジションを造り上げ、
変化に対応しながら組織の良い状態を未来永劫に良い状態に
維持していくことです。

 そのためには能力を持たなければなりませんが、
これは人に言われて行うことではありません。

 組織は自らの特徴(強み、弱みなど)を自覚し、
常に自律的にこの能力の獲得、維持を
図っていかなければなりません。

 附属書SLの本質もこの組織の能力にあります。

 このような自律した組織の能力とは一体どのようにして
獲得、維持、発展させていくのでしょうか?

■□■ 自律した品質経営 ■□■

 超ISO企業研究会
(会長:飯塚悦功 東京大学名誉教授、
 事務局:テクノファ)では、

組織が自律して品質経営を実践することで
持続的に成功していくための研究会活動の
実践報告会 ―フォーラム(無料)― を開催します。

 附属書SLの理解を意識しながら、
このフォーラムで企業経営の根幹とは何かを
掴んでいただきたいと思います。

 私もパネルディスカッションの司会をしながら
実践途上にある企業の実態、本音に迫ってみるつもりです。

会場で、皆様とお会いできることを楽しみにしております。

以上

次期9001改正 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.82 ■□■

*** 次期9001改正 ***
—————————————————–
■□■ISO9001からは設計が消える?■□■

 本メルマガVol.75(当時はCD:committee Draft)では
次期ISO9001からは「design:設計」という文字が消える、
という話をしました。

 本当でしょうか?

2014年5月初旬に
次期ISO9001のDIS(Draft International Standard)が
発行されました。

そこには、「design:設計」という用語は復活しました。

■□■次期ISO9001のDISの特徴■□■

 ISO/DIS9001:2015版は現在日本規格協会から
Webで販売されています。

その特徴は次のようなものです。

(1)附属書SLがベースとなっている。

 ・組織の状況の理解が要求事項になっている。
 ・「QMSの意図した結果」を明確にする必要がある。

 ・外部、内部の課題を明確にしなければならない。
 ・QMSの利害関係者、利害関係者の要求を明確に
  しなければならない。

 ・9001規格要求事項の組織への適用は組織が
  その境界などで決めなければならない。
 ・QMSのリスクと機会を明確にしなければならない。
  (予防処置の要求事項はなくなった)

 ・事業プロセスにQMS要求事項を統合しなければならない。
 ・文書、記録は総て「文書化された要求
  (Documented Information)」という用語で統一されている。

 ・品質マニュアルを作成しなければならない、という要求はない。
 ・管理責任者を任命しなければならない、という要求はない。

(2)プロセスに関する要求が強化されている。

(3)設計・開発への要求が軽減化されている。

(4)アウトソース、購買が一つの概念に纏められている。

(5)パフォーマンスへの要求が強化されている。

(6)「知識」が新しいものとして要求されている。

(7)従来の製品という用語は、製品・サービス
 という用語に変更になった。

(8)その他幾つかの用語の変更がある。

(9)従来になかったAnnexが付いた。

 ・2015年版の特徴を述べたAnnex A
 ・品質マネジメントの7原則 Annex B
 ・ISO9001ファミリー規格の一覧 Annex C

■□■設計・開発への要求は?■□■

 箇条8運用の8.3には設計・開発の要求があるが、
ISO9001:2008版に比べると、レビュー、検証、
妥当性確認への要求が軽減されています。

 ISO9001:2008版では、それぞれ一つの箇条で
要求されていたものが、纏まって要求されるようになり、
したがって詳細な要求にはなっていません。

 これは、サービス業においては設計という概念が
薄いことへの配慮であると説明されています。

設計・開発に関する箇条は以下の通りです。

 8.3  製品及びサービスの設計・開発
 8.3.1 一般
 8.3.2 設計・開発

設計・開発のレビュー、検証、妥当性確認の
計画の策定の要求がある。

 8.3.3設計・開発のインプット
 8.3.4設計・開発の管理

計画した設計・開発のレビュー、検証、
妥当性確認を実施する要求がある。

 8.3.5設計・開発のアウトプット
 8.3.6設計・開発の変更

次回からISO/DIS9001:2015について
話を進めていきたいと思っています。

おわり

附属書SLと次期9001の改正 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.75 ■□■

*** 附属書SLと次期9001の改正 ***

—————————————————–
■□■附属書SLとISO9001(つづき)■□■
 フォーラムの続きです(昨年テクノファ年次フォーラムでは
附属書SLに関して、有識者の方に集まっていただいて
パネルディスカッションを行いました)。

 フォーラムの時の様子をお伝えしますが、出席者の方の発言は
平林の責任で編集させていただいています。

*********************************
中條先生(中央大学教授):
 箇条8については、単純に言うと、2008年版で書いてある内容を
 2015年版に全て引き写すのが基本的な考え方なので、
 附属書SLにないところは全部プラスになっています。

 もちろん2008年版自体に足している部分、新たに追加になっている
 要素もあります。

平林良人(テクノファ):
 箇条8に追加要素がたくさんあるということですが、例えば、
 附属書SLの8.1では6~7行しかテキストがありません。

 ここに現状のIS09001の箇条7関連の2~3ページ分のテキストが
 ずらずらと人ってくるわけですね。

 では全体のボリューム感については2008年度版と比べると
 どの程度でしょうか。

中條先生:
 全体としてみると、2008年版にあったものの8~9割は
 入ってきそうです。

 ただ部分的な増減はあります。

 また、2008年版で相当細かかった記述は、
 若干抽象化される可能性があると思ってください。

 先ほどCD版では2008年版をそのまま引き写してくると言いましたが、
 設計の妥当性確認や検証に関してはかなり抽象化した内容で
 持ってきたので、その分かなり薄くなっています。

 例えば8.5 「商品・サービスの開発」では、
 単純に「設計でやるべきこと」といってずらりとリストが書いてあって、
 そのリストの中に設計の妥当性、検証、デザインレビューなどが
 含まれています。

■□■箇条8への追加■□■

平林解説:
 箇条8は品質のオペレーションの部分で、他のMSSがそうであるように、
 ISO9001もこの箇条8には品質に固有のことを記述しています。

 主な所を抜き取ってみます。

 8.2.2「商品・サービスに関連する要求事項の明確化」は、
 2008年版7.2.1「製品に関連する要求事項の明確化」とほとんど同じ
 内容の要求事項となっています。

 「組織は,該当する場合には,
  必ず次の事項を明確にしなければならない。

 a) 顧客が特定した要求事項。これには引渡し及び引渡し後の活動に
   関する要求事項を含む。
 b) 顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が
   既知である場合,それらの用途に必要な要求事項
 c) 商品・サービスに適用される法令・規制要求事項
 d) 組織が必要と判断する追加要求事項のすべて」

 しかし、お気づきのように「製品」が「商品・サービス」に
 変わっています。

 今回、サービス業への配慮の視点から、productという用語は
 goods and servicesに変わりました。

 多くの方から、やはり「product:製品」という用語が
 いいという意見を聞いております。

 今後DISに向けてどのような検討がされるか注目したいと思います。

 
 8.2.4 は「顧客とのコミュニケーション」となっています。

 「組織は,次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るために
 計画された方法を決定し,実施しなければならない。

 a) 商品・サービス情報
 b) 引合い,契約若しくは注文の取扱い。それらの変更も含む
 c) 苦情を含む顧客からのフィードバック(9.1 参照)
 d) 該当する場合には,顧客の所有物の取扱い
 e) 関連する場合には,緊急処置の特定の要求事項」

 附属書SLの箇条7.4「コミュニケーション」には次の要求があります。

 「組織は,次の事項を含む,品質マネジメントシステムに関連する
  内部及び外部のコミュニケーションを実施する必要性を
  決定しなければならない。

  - コミュニケーションの内容(何を伝達するか。)
  - コミュニケーションの実施時期
  - コミュニケーションの対象者」
 

 7.4と8.2.4には重複感がありますが、
 8.2.4は顧客に焦点を絞っています。

 顧客とコミュニケーションすべき項目を具体的に要求しています。

■□■箇条8への追加―つづき■□■

平林解説:
 規格は現在CDの段階ですので、まだいろいろ変わります。
 ただし、附属書SLの部分は変わりません。

 CD段階でどのような項目が箇条8にあるのかを見てみましょう。
 以下が箇条8の細分箇条も含めての項目立てです。

 8 運用
  8.1 運用の計画及び管理

 8.2 市場ニーズの明確化及び顧客との相互作用
  8.2.1 一般
  8.2.2 商品・サービスに関連する要求事項の明確化
  8.2.3 商品・サービスに関連する要求事項のレビュー
  8.2.4 顧客とのコミュニケーション

 8.3 運用計画プロセス

 8.4 外部から提供される商品・サービスの管理
  8.4.1 一般
  8.4.2 外部からの提供の管理の方法及び程度
  8.4.3 外部プロバイダーに対する文書化した情報

 8.5 商品・サービスの開発
  8.5.1 開発プロセス
  8.5.2 開発管理
  8.5.3 開発の移行

 8.6 商品製造及びサービス提供
  8.6.1 商品の製造及びサービス提供の管理
  8.6.2 識別及びトレーサビリティ
  8.6.3 顧客又は外部プロバイダーの所有物
  8.6.4 商品・サービスの保存
  8.6.5 引渡し後の活動
  8.6.6 変更管理

 8.7 商品・サービスのリリース

 8.8 不適合商品・サービス

 8.5商品・サービスの開発 から「設計:design」という用語が
消えていますが、これについては82号あたりで触れたいと思います。

以上

附属書SLと次期9001、14001の改正 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.74 ■□■

*** 附属書SLと次期9001、14001の改正 ***

—————————————————–
■□■附属書SLへの追加事項、逸脱事項 ■□■

 今まで附属書SLのキーワードについてお話しをしてきましたが、
昨年テクノファ年次フォーラムでは附属書SLに関して、有識者の方に
集まっていただいてパネルディスカッションを行いました。

今回からはその時の様子をお話ししたいと思います。

パネラーは次の方々でした。
 ・中條武志 ISO/TC176(品質マネジメントシステム)日本代表委員
       ・国内審議委員会委員長、中央大学教授

 ・吉田敬史 ISO/TC207(環境マネジメントシステム)
       日本代表委員・国内審議委員会委員長、
       グリーンフューチャーズ社長

 ・野口和彦 ISO/TC262(リスクマネジメント関連)日本代表委員、
       三菱総合研究所研究理事

 ・奥野麻衣子 ISO/TC207/SC1(環境マネジメントシステム)日本代表委員、
        TMB/TAG/JTCG対応TC207/SC1代表委員、
        三菱UFJリサーチ&コンサルティング環境・エネルギー部
        副主任研究員

 ・高取敏夫 ISO/IECJTC1/SC27(情報セキュリティマネジメントシステム)
       国内審議委員、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)情報マネ
       ジメント推進センター副センター長

 私、平林がコーディネーター(司会)を務めさせていただきました。

■□■ISO9001と附属書SLへの追加について■□■

 総てのMSS(マネジメントシステム)規格は附属書SLに
準拠することが求められています。

特に、附属書SLからの逸脱はTMB(ISOのボード)へ
報告しなければならないことになっています。

追加はそれぞれのTC(専門委員会)の裁量に任されています。

 ISO9001規格は2015年9月発行を目標に議論が進んでおり、
現在CD(委員会原案)が承認され、DIS(国際規格草案)に向けた議論が
行われているところです。

■以下、フォーラムの時の様子をお伝えします
(編集上、出席者の方の発言は平林の責任でまとめさせていただいています)。

平林:最初に中條先生にISO9001改正についてうかがいます。

中條先生:
 現在、IS09001はCD(委員会原案)の段階ですが、附属書SLから
 逸脱しているところが何ヵ所かあります。
 ただ今までの議論の推移を見ていると、断言はできませんが、
 今後の会議で見直されてこれらの逸脱はなくなると思います。

 ただIS(国際規格)になるまで時間があるので、今後も逸脱する
 ところが出てこないとは言い切れない状況です。

 一方、IS09001独自に追加する要素に関しては、
 当然ですが出てきています。

 中でも一番大きいのは附属書SLにおける箇条8の「運用」に関係する内容です。

 もともと箇条8では、附属書SL「8.1運用の計画及び管理」以外は、
 各専門委員会で検討することになっているため、
 SL本文にはほとんど書かれていません。

 IS09001おいて「運用」は2008年版では箇条7ですが、IS09001において
 重要な要素であり、CD版には多くのテキストが入ってきています。

■□■プロセスアプローチの追加■□■

平林解説:
 他には、4.4.2に「プロセスアプローチ」が要求として
 追加されていることが大きいと思います。

 そこでは「プロセスアプローチを適用しなければならない」に加えて
 次のことが要求されています。

 1)品質マネジメントシステムに必要なプロセスの明確化
 2)各プロセスについて、インプット、アウトプットの明確化
 3)各プロセスの順序及び相互関係の明確化
 4)リスクの明確化
 5)判断基準、方法、測定、パフォーマンス指標の明確化
 6)プロセスの責任権限の割り当て
 7)各プロセスの意図したアウトプットをもたらし続けることの確実化
 8)プロセスの改善

■□■計画の変更を追加■□■
 
中條先生:
 6章に細分箇条6.3「変更の計画」を追加しています。

 これは何かを変更する際、さまざまなトラブルが起きる可能性がある
 ので、しっかりと計画を立てる必要があるということです。

平林解説:
 変更管理については、8.6.6においても「変更管理」というタイトルで
 ズバリ「組織は、商品・サービスの完全性を維持するため、変更による
 潜在的影響のレビューを考慮し、必要に応じて処置をとりながら、
 計画した体系的な方法で変更を実施しなければならない」と要求しています。

 箇条7には、7.1.2「インフラストラクチャー」、7.1.3「プロセス環境」、
 7.1.4「監視機器及び測定機器」、7.1.5「知識」が追加になっています。

■□■7.1.5「知識」とは■□■

平林解説:
 箇条7に追加になっている「知識」についてもう少し説明します。

 ここでの要求は次のとおりです。

 「組織は,品質マネジメントシステム及びそのプロセスの運用,
  並びに商品・サービスの適合性及び顧客満足を確実にするために
  必要な知識を決定しなければならない。

  この知識は,必要に応じて,維持し,保護し,利用可能にしなければ
  ならない。」

 続いて次のように要求しています。
 
 「ニーズ及び傾向の変化に取り組む際に,組織は,現在の知識ベースを
  考慮に入れ,必要な追加の知識を入手する方法又はそれらに
  アクセスする方法を決定しなければならない(6.3 も参照)」

 組織がいままで蓄積してきたノウハウ、知財一般は総て組織の知識として
 大切に管理する必要があるということです。

つづく

附属書SL究極のキーワード2 | 平林良人の『つなげるツボ』

—————————————————–
■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.72 ■□■

*** 附属書SL究極のキーワード2***

—————————————————–
■□■附属書SL「組織の能力」について■□■

 附属書SLには次の要求があります。

「4.1 組織及びその状況の理解
  組織は,組織の目的に関連し,かつ,そのXXXマネジメント
  システムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える,
  外部及び内部の課題を決定しなければならない。」

 この箇条で要求されていることは
「外部及び内部の課題を決定しなければならない」ですが、
キーワードはその前にある「組織の能力」です。

 なぜかというと、外部及び内部の課題を決定する目的は、
品質マネジメントシステムの意図した成果を達成する能力を組織が
保有することにあるからです。

■□■組織はどのようにして能力を保有するか?■□■

 附属書SL(ISO9001でも)は、
「外部及び内部の課題を決定しなければならない」と要求し、

箇条9.3マネジメントレビューにおいて
「品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化」を
考慮しなければならない、としているだけです。

 即ち、直接「組織の能力」に関して要求をしているわけではありません。

しかし、附属書SLを使って組織に成果をもたらすためには、
組織はどのようにして能力を持つのかを考えなければなりません。

■□■JISQ9005:2014規格■□■

 JISにはISO9001を超えるレベルを推奨する
9005:2006、9006:2006の2種類のガイド規格がありますが、
現在9005に一本化する活動が進んでいます。

2014年には新しいJISQ9005:2014が完成する見込みです。

その(JISQ9005:2014規格)DISには組織の能力に関する
参考になる記述が多くあります。

■□■重要視する品質マネジメントシステム要素 ■□■

 附属書Cには組織を俯瞰して重要視すべき品質マネジメント要素が
一覧になっています。

附属書Cには次の4つの要素が掲載されていますが、
それぞれには特定しておくべき「組織の能力」があります。

 ・固有技術,知識
 ・品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新
 ・製品・サービス実現プロセス
 ・経営資源の運用管理

■□■ 固有技術,知識 ■□■

「固有技術,知識」は
組織の死命を決するほど重要で根本的な経営要素ですが、
当然のことながらそれを支える能力はこれまた、
組織の生死にかかわる格別重要な能力です。

 たとえば、設計能力、生産技術能力、製造能力、評価能力です。

設計能力は「小型化をすすめる設計技術」とか具体的に能力を
明確にしておくことが重要です。

「多種多様な金融商品を設計する」能力も金融業では必要なものでしょう。

生産技術能力も「高硬度材料X の加工法」というように具体的に
表現することがポイントです。

製造能力では「複雑形状の金型製造技術」というような例があります。

評価能力では「高精度かつ高速度分析が可能な評価技術」能力とか、
あるいは「不特定多数のユーザからのコメント,レビュー内容などを
分析する」能力などを例に上げることができます。

■□■品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新■□■

「品質マネジメントシステムの企画,有効性評価,革新」においては、

事業環境変化分析、事業シナリオの策定、品質方針/品質目標の展開、
品質マネジメントシステムの有効性/評価/事業における
パフォーマンスの評価及びそのフィードバックなどを能力として
上げることができますが、更に具体的にすることが必要です。

 事業環境変化分析は、たとえば「競合組織と比べて業界動向情報の
迅速な獲得ができる」能力というような具合です。

 事業シナリオの策定については、「競争優位の獲得,維持及び向上が
実現可能な事業シナリオの策定ができる」能力です。

 品質方針/品質目標の展開についても、「 実現可能な方策への確実な展開及び
効果的な担当者の割付けができる」能力という具合によりブレークダウンします。

「品質マネジメントシステムの有効性/評価/事業におけるパフォーマンスの評価及び
そのフィードバック」については、

「個人単位での目標達成状況を管理する」能力などが例として上げられます。

■□■次回は再度、組織の能力について■□■

 製品・サービス実現プロセス、経営資源の運用管理の
2つの要素に関する能力については次回の説明とさせていただきます。

(つづく)