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ISO/TC176(品質保証)東京総会 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.7 ■□■
 
  *** ISO/TC176(品質保証)東京総会 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は2月23日~28日東京で開催されたISO/TC176(品質保証)
の話をさせていただきます。

ところで、前回「今年は名古屋で生物多様性国際会議(COP
10)が開かれる」と書きましたが、来年(2010年)の誤りで
した。お詫びして訂正させていただきます。

では、今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 日本では3回目の総会 ■□■

TC176の第26回総会が有楽町の東京国際フォーラムで1週間開か
れました。世界各国から200人くらいの代表が集まりました。

ホスト国の代表として挨拶された東京大学飯塚先生は、「日本
は今回で3回目のホスト国を務めることになる、いかに日本が
ISOを好んでいるかの証拠である、と同時にクレージである」と
いって参加者を笑わせました。

クレージ(crazy)には、夢中になると言う意味と頭がおかしい
という意味の2つがあるから皆が笑ったのですが、前回のホス
ト国経験は2000年の京都総会です。

カナダから来た私がよく知っている委員によると、京都総会で
の晩餐会には舞妓の踊りも披露され好評だったということです
(私も参加していたのですが、記憶は彼方のものになってしま
いました)。

200人規模の国際会議となると、会場代とイベント代(レセプ
ション、夕食会、通信費など)での経費は数1,000万円単位にな
るそうです。

また準備も大変です。ざーっと挙げてみても次のような準備を
しなければなりません。
・会議日程の周知
・会議会場の手配
・滞在ホテルの手配
・会議中休憩場所、お茶手配
・会議用コンピュータ、プロジェクタ、FAX、コピーの手配
・会議周辺の英文地図
・案内役(学生アルバイト)手配
・緊急時対応
・通信
・伝言体制など

まだまだあるのでしょうが、経済的に余裕のある国、あるいは
経済状況の良い時でないとホスト国を務めることはなかなかで
きません。

■□■ 世界的不況の影響? ■□■

今回の参加者は200人と言いましたが、この数は例年の総会参加
者の数を下回ります。

理由は幾つか考えられますが、一つは世界的な不況と円の高騰
であろうといわれています。特に円の高騰については、つい昨
年の総会時(2008年5月、セルビア)では1ドル115円だったも
のが、90円になってしまったわけですから、海外からくる人た
ちには経済的負担が大きかったようです。

次に考えられるのが、ISO9001:2008規格が一段落して、大きな
目玉がなくなったということもあります。

今回の総会でのメイントピックスは次のようなものでした。
・ISO/DIS9004:2008規格を審議してFDISにする。
・ISO19011規格改正の審議をする。
・ISO9001:2008中小企業へのガイドブックを改正する。
・ISO9000:2005規格改正の審議をする
・ISO16949(自動車セクター規格)の改正の審議をする。
・その他

その他には、
ISO10001(品質マネジメント-顧客満足-組織のための行動規
範の指針)
ISO10002(品質マネジメント-顧客満足-組織における苦情処理
の指針)
ISO10003(品質マネジメント-顧客満足-組織における紛争解決
の指針)
ISO10004(顧客満足の測定及び監視、CD又はDISの作成段階)
ISO10005(品質マネジメントシステム-品質計画書の指針)
ISO10007(品質マネジメントシステム-構成管理の指針)
ISO10012(計測マネジメントシステム-測定プロセス及び測定
機器の要求事項)
ISO10014(品質マネジメント-財務的及び経済的便益を実現す
るための指針)
ISO10018(品質マネジメントシステム-マネジメントシステム
における人々の参画及び力量、WD2段階)
ISO10019(品質マネジメントシステムコンサルタントの選定及び
そのサービスの利用のための指針)
IWA2(品質マネジメントシステム-ISO 9001:2000の教育分野へ
の適用の指針)
IWA4(品質マネジメントシステム-地方自治体におけるISO 900
1:2008の適用の指針)
peoples、time/agilityなどの見直し、改正審議などが入ってい
ます。

■□■ オブザーバーが一番多かったのはISO9001 ■□■

総会へはスポンサーとなった日本の関係機関からオブザーバー
の出席が許されました。全部で40人くらいの参加がありました
が、一番人気があったのはISO9001(future revision) でした。

ISOのルールで規格改正から3年間は規格内容を修正することは
できません。したがって、昨年改正されたばかりのISO9001規格
についての議論は、今後どうあるべきかというビジョンに関す
るものとなりました。

ビジョンの議論では、ISO9001規格の内容に含んだほうがよい
と思われる内容として、例えばIT(情報技術)の活用、サプライチ
ェーンマネジメント、リスクマネジメント、CSR(Corporate Social
Responsibility)との連携など、いろいろな意見が出されました。

しかし、今回の総会での議論はあくまでも今後のISO9001規格の
あるべき姿へのブレーンストーミングであって、ここで議論された
ものは集約されたものではなく、従ってそのまま次期ISO9001規格
へ反映されるものではありません。

このように多様な議論が交わされた結果、委員の意見だけでなく
ISO9001規格の利害関係者からも意見を聞いた方がよいのではな
いかという意見も出されました。

利害関係者とは 誰かということになりますが、第三者審査登録を
受けた組織だけではないと思います。 受審組織に加え、消費者、
政府、規制当局、経営者、従業員、株主なども利害関係者です。

■□■ マネジメントシステムの必要性 ■□■

経営者は売上が伸び利益が上がっているうちはそれでよいと考
え、マネジメントシステムの構築の必要性を感じないことがあ
ります。

しかし、本当にマネジメントシステムは必要ないのでしょうか。
議論のなかでは、良い状況にあるときほどマネジメントシステ
ムを構築しておくべきではないかという意見が多かったように
思います。

逆に周りがやっているから自分たちも構築しなければ社会的ス
テイタスが維持できないと考えて、つい形式的なマネジメント
システムを構築してしまうケースもあるようです。

実質のない、形骸化したマネジメントシステムを構築しても百
害あって一利なしであるという意見が多かったと思います。

また、世界的大不況の環境下にあって、マネジメントシステム
構築どころではない、まずは注文をとってこなければならない
という意見も聞かれました。

それに対していやいやこういう時期だからこそマネジメントシ
ステムを見直すべきであるという意見もありました。

マネジメントシステムの有効性・有効活用については
テクノファのセミナーが参考になります。

「平林良人によるマネジメントシステムの有効性向上術」
http://www.technofer.co.jp/training/iso9000/tm01.html

「QMS組織活性化のための組織風土改善コース」
http://www.technofer.co.jp/training/iso9000/tq81.html

しばらくはこのような議論、意見交換がされていくであろうと
思います。猶予期間3年間のなかで次期ISO9001規格のフレーム、
DS(Design Specification)を作成し、2015年の完成を目指して
規格作りをしていくことになりそうです。

ただ、これからはISO9001単独では議論が進みません。
ISO14001規格(環境マネジメントシステム)、ISO27001規格
(情報セキュリティマネジメントシステム)などと整合(規格の構造、
用語の定義、共通要素の統一など)を取って規格作りを進めてい
くことが既に決められています。

ボランタリーからつなげる | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.3 ■□■

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■□■ ボランタリーからつなげる ■□■

テクノファ代表取締役の平林です。

皆様、新年明けましておめでとうございます。
昨年と同様2009年も宜しくお願いいたします。

今回は「ISOはボランタリー」と題して、先のメルマガに引き続き国際会議の
話をさせていただきます。

■□■ ISOはボランタリー ■□■

ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)
で作成される規格はボランタリー規格といわれています。

ボランタリー(voluntary)とは、「強制的ではなく自発的に自ら進んで行う」
ことをいいます。

ISO9001、ISO14001、或いはその他多くの規格も強制的ではなく自発的に採用
することが前提とされています。

でも、本当にそうなのでしょうか?
確かに、ISO9001もISO14001も組織が自ら進んで行うものとされていますが、
実態は少し違うようです。

一般的には知られていないと思いますが、ISOの技術専門委員会(TC)の事務局
もボランタリーと称されています。

例えば、ISO9001を審議しているTC176は英国規格協会(BSI)が事務局を引き
受けています。日本の(社)日本鉄鋼連盟は、TC17(鋼)の事務局を引き受
けています。

ボランタリーですから、事務局経費は引き受けた組織が負担します。
(社)日本鉄鋼連盟は、毎年億単位の予算を投じています。

また、TCに参加する委員もボランタリーと称されています。したがって、国
際会議に出席しても手当は出ません。

これでは、事務局、委員などの引き受け手がいないのではないかと思われる
かもしれません。ところが、この役を引き受けるのにはメリットが潜んでい
るのです。

■□■ ボランタリーの裏に潜むメリット ■□■

世の中には、強制と任意の両軸があり、その間に多くの組合せがあります。
決して、1か0の世界ではありません。例えば、強制とはいっても国が法律
で縛るものから、業界団体が規制で縛るものまでいろいろです。

任意といっても、全く自主的なものから、仲間意識などからやらざるを得な
い任意まで、これまたいろいろです。

任意だったものが、いつの間にか強制になっているという世界を私たちは見
てきています。

そもそも、世の中すべてのことは誰かが任意で考えたこと、行動したこと、
から始まっていますよね。

このロジックに気が付いた国、組織、人達は「ボランタリー」という概念を
うまく利用しています。

ボランタリーの裏に潜むメリットを享受しようとしている世界、私が参加し
てきた国際会議はそのような舞台でした。

■□■ 各国の思惑 ■□■

ISO9001の認証制度は、サッチャー政権時代に英国の経済産業省(DTI : Dep
artment of Trade and Industry)が政策として始めたものが最初であると
いわれています。

ISO9001規格もいろいろ説はありますが、英国のBS5750:1979をベースにして
いるといわれています。

そんなことがあって、私の参加している国際会議では英国(BSI)の動きが
いつも注目されています。

それに対抗していこうとしているのがドイツです。ドイツは2004年に「スタ
ンダードをつくるものは市場をコントロールする」とドイツ国家標準化戦略
の中で述べています。

私はマネジメントシステム規格(標準)の国際会議しか知りませんが、工業
製品の標準化のISO国際会議はより強く国の戦略、企業の戦略がお互いに
火花を散らしているようです。

■□■ 任意から強制へ ■□■

1995年1月に発効した、WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)
の第2条は、各国の中央政府の国際規格の使用を義務付けました。
(WTO加盟国151ヶ国、2007年10月現在)

いままで任意と思われていたISO規格が強制の方向に一歩踏み出したのが
この1995年であると言われています。

1995年は、国際標準がグローバルな市場支配力をもつ時代の到来の年である
といってよいと思います。

ボランタリーは実はマンダトリー(mandatory:強制)につながっていたので
す。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の第4号もどうぞお楽しみに。