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飯塚サロン | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.115 ■□■   
*** 飯塚サロン ***
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■□■ 超ISO企業研究会 ■□■

テクノファでは、東京大学名誉教授 飯塚悦功さんを会長とする超ISO企
業研究会の事務局を担当させていただいております。
今回はその一つの活動である飯塚サロンの最近の様子をお話しさせてい
ただきます。

■□■ 前回開催のテーマ(2月1日) ■□■

ISO9001:2015箇条6「計画」がテーマになりました。

箇条6は次の3つの細分箇条から構成されています。

・6.1 リスク及び機会への取組み
・6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
・6.3 変更の計画

飯塚サロンでは、まず飯塚先生がテーマについてお話をされます。
今回は、冒頭以下のようなお話がありました。

■□■ 今回のねらい(飯塚先生のお話) ■□■

・前回「リスク」と「品質目標」について考察した。

・それは,箇条6(計画)を構成する2つの箇条

-6.1 リスク及び機会への取り組み
-6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定

に、この2つの用語「リスク」と「品質目標」が含まれていて、「リスク」に言
及する意味がよく理解できなかったからに違いない。

・しかし,箇条6をよくよく見てみれば,これは,「計画」というものを、どのよ
うに行うべきかについての規定なのだ。

・「木を見て森を見ず」は情けない。そこで、今回はあらためて「計画」とは
如何なる経営機能であるか考えてみたい。

・その過程で、「管理/マネジメント」、「PDCA」、「計画の構成要素」、「目
標設定の方法」、「目標達成方法の検討」、「管理項目・管理指標」、「問題
解決・原因分析」などの意味と役割について考えることになるだろう。

■□■ PDCAとは目的達成のための活動 ■□■

よくPDCAというが、それぞれに2つのポイントがある。

Planにおいては次の2つがある。

P1: 目的,目標,ねらいの明確化
P2: 目的達成のための手段・方法の決定

計画を作るにあたっては、その目的、目標の設定の他に達成手段の決定
も重要である。

Doにも、実施準備というもう一つのDo がある。

D1: 実施準備・整備
D2: (計画,指定,標準通りの)実施

Checkでは、確認、処置の他に副作用という概念が重要であり、副作用の
確認、対応をもう一つのCheckとして取り上げた。

C1: 目標達成に関わる進捗確認,処置
C2: 副作用の確認,対応

Actの2つは、応急処置及び再発防止である。

A1: 応急処置,影響拡大防止
A2: 再発防止,未然防止

■□■ 日常管理の実態の診断 ■□■

更に計画を立てるにあたって次の確認が有用である。

1.あなたの仕事は何ですか?
・あなたの仕事の目的は何ですか?
・顧客(あなたの仕事の成果の利用者)の期待・要求は何ですか?
・仕事の目的にはどのようなものがありますか?(展開)

2.その仕事の出来映えをどのように判断していますか?
・管理項目は何ですか?

3. 仕事の目的を達成するための手段・手順はありますか?
・それはどのようなものですか?
・・・プロセスフローチャート,マニュアル(規程,標準書,要領など),帳票
・それらの前提要件は整備されていますか?
・・・従事者の資格,教育・訓練,部品・材料,設備・計測器の保守など
それらの方法が”良い”ということをどのように保証していますか?

■□■ 出席者からの発言 ■□■

出席者からは改めてP、D、C、Aの神髄に触れることができたとの声が聞
かれました。

特に、「P2: 目的達成のための手段・方法の決定」については、プランした
計画になりがちなのは、この達成手段の方法が決定されていないからで
あるという感想がいくつかありました。

QMSの計画時にリスク及び機会を考えることは、新しい視点であると同時
に達成手段を考えて目標を立てなければならないことに改めて出席者一
同認識を新たにしました。

■□■ 懇談の話題 ■□■

2時間の議論の後、出席者から自由なテーマで話あっていただくコーナー
では、以下の2点が話題として出されました。

1.設計・開発は極めて計画に近い概念であるので、ほとんどの組織には
設計・開発プロセスが存在すると認識してよい。

ただし、組織の「製品が何であるか」を明確にして、その製品又はサービス
に関する要求事項の詳細化、計画業務であることが要点である。

当然のことであるが、組織には多くの計画業務が存在するが、製品又は
サービス要求事項に関するものでなければそれらを設計・開発とは呼ば
ない。

2.箇条8.2.2に「組織が,提供する製品及びサービスに関して主張してい
ることを満たすことができる。」とあるが、ここでいう「主張」とはQMSを構
築している組織の主張である。

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いかがでしょうか。
この短いメルマガでは全てをお伝えすることが出来ませんが、1人でも
多くの読者の方に飯塚サロンの良さをお伝え出来たら大変嬉しく思います。

プロセスアプローチ支援ツール | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.113■□■   
*** プロセスアプローチ支援ツール ***
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■□■ ソフトウエアを販売 ■□■

今回、第22回テクノファ年次フォーラム(無料、大阪12/16済、東京12/22)では、
「プロセスアプローチ支援ツール」ソフトウエアを特別価格でご提供させていた
だきます。

このソフトには、2015年版で要求されているプロセスアプローチの要素がすべ
て入っています。ISO9001の2008年版からの移行準備にはうってつけの支援ツ
ールだと思います。大阪では多くの方が関心をお持ちいただきご購入くださ
いました。

このソフトウエアは私が監修しましたので、この場でプロセスアプローチ構築の
流れを簡単に説明させいただきます。

■□■ ステップ1 事業プロセス ■□■

最初に、御社の現状の活動を事業プロセスとして一覧表にしていただきます。
ソフトには製造、建設、サービス3業種の事業プロセスのサンプルが収録さ
れています。

事業プロセスとは御社の全員が毎日行っている活動のことを意味しています。
例えば、営業プロセス、設計プロセス、製造プロセス、サービス提供プロセ
ス、人事管理プロセス、経理プロセス、経営管理プロセスなどです。

■□■ ステップ2  QMSに必要なプロセス ■□■

次に、その事業プロセスの中からQMSに関係ないプロセスを除きます。
例えば、上の例でいうと、経理プロセスなどは削除される候補になるかもしれま
せん。もちろん、組織はQMSに関係するプロセスとして経理プロセスをそのまま
適用することもできます。

■□■ステップ3  ISO9001:2015箇条.4.1■□■

3番目に、QMSに必要なプロセスごとにインプット、アウトプット、パフォーマンス
指標、責任/権限、判断基準、方法などを決め、一覧表にします。

ISO9001:2015箇条4.4.1が要求している次の項目に沿っています。

a) これらのプロセスに必要なインプット,及びこれらのプロセスから期待される
アウトプットを明確にする。

b) これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にする。

c) これらのプロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断
基準及び方法(監視,測定及び関連するパフォーマンス指標を含む。)を決定し
,適用する。

d) これらのプロセスに必要な資源を明確にし,及びそれが利用できることを確
実にする。

e) これらのプロセスに関する責任及び権限を割り当てる。

f) 6.1 の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。

g) これらのプロセスを評価し,これらのプロセスの意図した結果の達成を確実
にするために必要な変更を実施する。

h) これらのプロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。

これに関してもソフトには多くの事例が収録されています。

■□■ステップ4 規格要求事項の統合■□■

4番目に、事業プロセスへの規格要求事項の関連付けを行います。
ISO9001:2015箇条5.5.1には「c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシス
テム要求事項の統合を確実にする」ことが要求されています。

このソフトで一番工夫されているステップです。ソフトが示す8分類された規格要
求事項を御社の決定したQMSに必要なプロセスと関連付けをしていきます。

インプット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法な
どに関していろいろな気付きを得ることになるでしょう。

■□■ ステップ5 認証審査への準備 ■□■

5番目に、ここまで作成した各種一覧表、文書(タートル図を含む)などを印刷し
て、御社の2015年版の移行審査に備えます。

次の文書類の用意ができます。

1. 事業プロセス一覧表
2. QMS に必要なプロセス一覧表
3. 箇条4.4.1 で要求されているプロセスの要素一覧表(およびプロセス
ごとのタートル図)
4. プロセスと要求事項との関連付け表
5. 適用不可能とする要求事項(存在すれば)とその理由

■□■ ステップ6 フローチャート作成 ■□■

最後に、フローチャートを作成します。これは、ISO9001:2015箇条4.4.1 b)が
要求しているQMSに必要なプロセスの順序および相互作用を表すものです。

御社はここまでの6ステップを踏むことで、2015年版が要求しているプロセスア
プローチに基づいたシステム構築を計画することができます。

ステップの説明はこれで終わりますが、このソフトの特徴を以下に述べます。

■□■ 豊富な事例の収録 ■□■

このソフトには豊富な事例が入っています。例えば、製造、建設、サービス業の
事業プロセス一覧、またQMSに必要なプロセスへのインプット、アウトプット、パ
フォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法など、さらに28業種の活
動名(プロセス名)などが収録されています。

これらの事例を参考にする際には、現在の御社の活動にフィットするように事例
を修正、あるいは事例に追加することが重要です。

■□■ タートル図の採用 ■□■

QMSに必要なプロセスへのインプット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任
/権限、判断基準、方法などの決定は、事務局だけでは難しい場合があります

そのような場合には、プロセスの主管部門に決定をお願いすることが
よいでしょう。ソフトからは、個々の主管部門にお願いする図表(タートル図)が
アウトプットされてきます。

■□■ すべての規格要求事項を8種類に分類 ■□■

規格要求事項を事業プロセスに統合することについては、ソフト側ですべての
規格要求事項を8種類に分け、御社が決めたプロセスと比較検討する仕組みを
持っています。

特に箇条7支援にある要求事項は、御社のどのプロセスにも適用可能なのです
が、特に必要とされるプロセスへ適用することで有効なQMSとすることが期待で
きます。

■□■ 適用可能性の検討 ■□■

ISO9001:2015箇条4.3では適用可能性についての要求があります。ステップ4で
御社が決めたプロセスと規格要求事項を比較検討する際に、比較できない規格
要求事項は適用不可能としてソフトウエアは一覧表にして表示します。

その場合、さらによく検討して本当に採用できないのであれば、適用
不可能を正当化する文書を作成することになります。

以上、いろいろ説明しましたが、言葉だけでは理解しがたいところもありますの
で、一度お試しになってください。

組織の能力の実証 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.112 ■□■   
*** 組織の能力の実証 ***
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■□■ お詫びと訂正 ■□■

先の平林良人『つなげるツボ』Vol.111に箇条番号の誤りがありました。箇条4.4
と記述するところを箇条4.1と記述してしまいました。プロセスアプローチの要求
はISO9001:2015箇条4.4に規定されています。

ここに、箇条4.1→箇条4.4に、訂正させていただくと同時にお詫びを申し上げま
す。下記が該当箇所の正しい記載です。

■□■ ISO9001:2015箇条.4.4 ■□■

ISO9001:2015箇条.4.4では、QMSに必要なプロセスのそれぞれに対して、イン
プット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法などを
決めること、明確にすることを求めています。

■□■ さて、新しい話題です ■□■

ISO9001:2015は、箇条1適用範囲でa)、b)の2つのことを述べています。私はこ
のa)、b)の2つは組織がISO9001を採用する目的だと思っています。以下、箇
条1の文面です。

1 適用範囲

この規格は,次の場合の品質マネジメントシステムに関する要求事項につい
て規定する。

a) 組織が,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品
及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

b) 組織が,品質マネジメントシステムの改善のプロセスを含むシステムの効
果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への
適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

この規格の要求事項は,汎用性があり,業種・形態,規模,又は提供する製品
及びサービスを問わず,あらゆる組織に適用できることを意図している。

■□■ a)能力をもつことを実証するとは ■□■

a) 組織が,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品
及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

ここでいう実証の原文はdemonstrateです。実証とは、組織は顧客をはじめと
する利害関係者に自分の能力を示威することを意味しています。

「私は顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及び
サービスを一貫して提供する能力を持っています」と、利害関係者に宣言する
ことを意味しています。

■□■ 第三者は簡単には信じない ■□■

ISO9001:2015は組織委が実証する際に具備すべき要件を規定しています。利
害関係者は、組織が口頭で宣言したり、訴えたりしても簡単には信じてくれま
せん。

多くの人は口頭では信じないのです。QMSを形になったもの(documented
information)で示さないと信用度が低いのです。

■□■ b)顧客満足の向上とは ■□■

b) 組織が,品質マネジメントシステムの改善のプロセスを含むシステムの効
果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への
適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

a)に比べこちらの理解はやさしいと思います。QMSを構築することで顧客の満
足を向上させる目的でISO9001:2015を使ってください、と言っています。

■□■ QMSが形になったものとは何か ■□■

今回の改正で品質マニュアル作成の要求は無くなりました。筆者は
無くなった理由は、世界的に品質マニュアルが形骸化したからだと思っていま
すが、品質マニュアルこそがQMSを形にしたものの一つであると考えます。も
ちろん、適切に記述され、組織のQMSを概括して説明している品質マニュアル
であることが前提での話です。

ところで、箇条7.5.1には次のように要求されています。
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。

a) この規格が要求する文書化した情報

b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,
文書化した情報

■□■ 組織が決定した文書化した情報 ■□■

品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文
書化した情報にはどのようなものがあるか考えてみたいと思います。以下はそ
の事例です。

設計:設計を行うための手順書、CAD/CAM取扱い手順書(メーカーからの外
部文書)、設計標準、設計参考図書、ノウハウ集、問題事例集、強度計算書、
構造設計ソフトウエア、制定済設計図書、標準部品図、設計プロトタイプ、完
成予想図(建築パース)、実験計画書FMEA文書など購買:購買業務手順書、
取引業者一覧表、業者評価表、プライス表、注文票、発注表、受入検査表、見
積表など製造:製造手順書、指示書、点検票、QC工程表、工程レイアウト、品
質保証体系図、クレーム表、設計フィードバック表、引継表、現物見本、オペレ
ーション表、検査指示書、特性要因図、検査結果表、是正処置要求書、是正
処置表、修理表、修理結果表、点検報告書、妥当性確認票、精度チェック表、
識別表、トレーサビリティ表、保管条件表、メンテナンス指示書、プロセス表、
判断基準、校正表など

上の例はほんの一例にすぎません。
組織は従来からいろいろな部署で多くの文書(記録)を活用してきています。そ
れらを適切に管理することは、組織の能力を実証するうえで極めて重要なこと
です。ISO9001の要求している文書類は、組織で必要とする文書のわずかな
部分にすぎません。

プロセスアプローチが基本 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.111 ■□■   
*** プロセスアプローチが基本 ***
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■□■ ISO9001:20153つの概念 ■□■

ISO9001:2015には3つの概念があります。プロセスアプローチ、PDCA、リ
スクに基づく概念です。その中でもプロセスアプローチが基本の概念であると
説明されています。

■□■ 事業プロセス ■□■

ISO9001:2015には初めて「事業プロセス」という用語が出てきます。私は組
織の現状の業務を事業プロセスと呼んでいると思っていますが、これは組織
の全員が毎日行っている活動です。

例えば、営業プロセス、設計プロセス、製造プロセス、サービス提供プロセ
ス、人事管理プロセス、経理プロセス、経営管理プロセスなどです。このプロ
セスの名称は組織によって異なるでしょうが、どんな組織でも事業計画推進
のためにいろいろな活動を全員が毎日行っています。

■□■ QMSに必要なプロセス ■□■

ISO9001:2015は、その事業プロセスの中からQMSに必要なプロセスを明
確にすることを求めています。例えば、上の例でいうと、経理プロセスは組織
によってはQMSに必要でないプロセスと考えるかもしれません。組織によって
はQMSに関係あるプロセスとして経理プロセスを考えるかも知れません。

■□■ ISO9001:2015箇条.4.1 ■□■

ISO9001:2015箇条.4.1では、QMSに必要なプロセスのそれぞれに対して、
インプット、アウトプット、パフォーマンス指標、責任/権限、判断基準、方法
などを決めること、明確にすることを求めています。
(編集注記: 正しくは「ISO9001:2015箇条.4.4」の箇条となります)

■□■ QMS要求事項の統合■□■

ISO9001:2015箇条.5.1では、トップマネジメントに対して、「事業プロセスへの
QMS要求事項を統合すること」を要求しています。私は規格の要求事項など
を日常の業務に入れ込むことでQMSの形骸化を防ぐことを求めていると考え
ています。
このことで組織のQMSパフォーマンスが向上することに繋がることを期待しま
す。

■□■ 認証審査への準備 ■□■

ISO9001:2015への移行に当たっては、このプロセスアプローチが今まで以
上に強化され、適切に構築、運用されているかが認証審査のポイントの一つ
になると思います。

移行審査への準備に当たっては、ISO9001:2015箇条.4.1に沿って各種要
求事項が適切に計画され、実施に移されているかを組織自身が確認すること
が必要でしょう。
(編集注記: 正しくは「ISO9001:2015箇条.4.4」の箇条となります)

■□■ プロセスオーナー ■□■

プロセスオーナーという言葉があります。これはプロセスの主管部門を意
味している用語です。例えば、設計プロセスならば設計課、製造プロセスなら
製造課ということになります。

QMSに必要なプロセスへのインプット、アウトプット、パフォーマンス指標、
責任/権限、判断基準、方法などの決定は、事務局だけでは難しい場合があ
ります。

そのような場合には、プロセスの主管部門(プロセスオーナー)に決定をお
願いすることがよいでしょう。

■□■ 規格要求事項を事業プロセスに関連つける■□■

事業プロセスに規格要求事項を統合するという要求に対しては、すべての
規格要求事項を組織が決めたプロセスと結び付けてみるとよいでしょう。

箇条8.3設計・開発は設計課、8.5製造及びサービス提供は製造課あるい
はサービス提供課という具合です。

■□■箇条7は全ての事業プロセスに関連する■□■

しかし、箇条7の要求は特定のプロセスオーナーに関連しません。すべて
の事業プロセスに関連します。

7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識11
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報

■□■ 適用可能性の検討 ■□■

ISO9001:2015箇条4.3では適用可能性についての要求があります。組織が
決めたプロセスと規格要求事項を関連付ける際に、関連しない規格要求事項
は適用不可能の可能性があります。

その場合、さらによく検討して本当にその要求事項を採用できないのであ
れば、適用不可能を正当化する文書を作成しなければなりません。

ISO9001の写像2 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.98 ■□■
*** ISO9001の写像2 ***
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■□■ISO9001要求事項のMappingの仕方■□■
前回は写像という言葉を使いました。

案の定難しいという反応がありましたので、
今回からはmappingという言葉に変更します。

「写像」とmappingではニュアンスが異なりますが、
行うことの目的は同じですのでmappingでよいかと思います。

ISO9001要求事項を組織のプロセスに
mappingする手順は次の通りです。

このmappingを通じて、
「事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合」
することが可能になります。

1.規格の要求事項を理解する。
2.箇条4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」の
input、outputなどにmappingする。
3.mappingした内容を貴社の具体的内容に置き換える。

■□■input、outputなど■□■
ISO9001:2015箇条4.4では、mappingされる先を、
それぞれのプロセスのinput、output以外、
次の多くのものを指定しています。

a)input、output
b)省略
c)判断基準、方法(測定を含む)
d)資源
e)責任権限
f)リスク、機会
g)監視、測定
h)改善

ここでb)を省略としたのは、「順序及び相互作用」は
フローチャートで示すことの方が効果的であるからです。

■□■「QMSに必要なプロセス」と「事業プロセス」■□■
上述した
「事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合」
という要求は、ISO9001:2015箇条5.1.1 d)にあります。

箇条4.4も品質マネジメントシステム要求事項ですから、
4.4で要求されている「QMSに必要なプロセス」は
事業プロセスに統合されたものでなければなりません。

すなわち、事業プロセスから、QMSに必要でないと
組織が判断して削除して残ったものが「QMSに必要なプロセス」です。

■□■では事例を示します■□■
簡潔明瞭な事例は、
「8.3 製品及びサービスの設計・開発」において示すことができます。

まず、「8.3.3 設計・開発へのインプット」です。

「組織は,次の事項を決定しなければならない。
a)該当する場合には、機能及び性能に関する要求事項を含めた、
設計・開発される特定の種類の製品及びサービスに不可欠な要求事項
b)適用される法令・規制要求事項
c)組織が実施することを約束している、実践の基準又は規範
d)製品及びサービスの設計・開発に必要な内部資源及び外部資源
e)製品及びサービスの性質によって起こり得る故障の影響
f)顧客及びその他の利害関係者によって期待される、
設計・開発プロセスの管理レベル

インプットは,設計・開発の目的に対して適切で、漏れがなく、
曖昧さのないものでなければならない。

インプット間に相反するものがあるときは、
これを解決しなければならない。」

この要求事項は、組織の設計プロセスのinputにmappingすることに
なります。

同様に「8.3.5 設計・開発からのアウトプット」は、
組織の設計プロセスにoutputにmappingします。

「組織は、設計・開発からのアウトプットが、次の状態であることを
確実にしなければならない。

a)設計・開発に関するインプットの要求事項を満たす。
b)製品及びサービス提供に関するそれ以降のプロセスに対して
適切である。
c)監視及び測定の要求事項、及び該当する場合には、
合否判定基準を含むか、又はそれらを参照している。
d)製造される製品、又は提供されるサービスが、意図した目的、
及びそれらの安全で適切な使用に適していることを確実にする。

組織は、設計・開発プロセスの結果として生じた、文書化した情報を
保持しなければならない。」

■□■mappingするときのポイント■□■
mappingするときに一つ重要なポイントがあります。

貴社でmappingした内容を組織の具体的なinput、outputに
置き換えることが重要です。

例えば、inputのb)には「適用される法令・規制要求事項」と
ありますから、もし貴社が食品会社でしたら
「食品衛生法」にある規制事項を掲げることになります。

ISO9001規格は一般的にしか規定していませんから、
貴社の具体的な内容に置き換えなければなりません。

ここで疑問が生じると思います。
「適用される法令・規制要求事項」といっても
食品衛生法以外多くの関係する法律があるが
いくつ位特定しなければならないのか?

また、ISO9001規格の要求は「法令・規制要求事項」であって、
法律名を要求しているわけではないが、どうすべきか?

などの疑問が出てくるものと思います。

箇条4.4の最後には次のように書かれています。

「組織は、プロセスの運用を支援するために必要な程度の、
文書化した情報を維持し、かつ、プロセスが計画どおりに
実施されたという確信をもつために必要な程度の、
文書化した情報を保持しなければならない。」

そうです、プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために
必要な程度でよいのです。

結局貴社が、自分自身の現状を踏まえる中から、
この「必要な程度」が決まってくるのです。

次回は、箇条8.3の触れなかった以下の細分箇条について説明をします。
8.3.1 一般
8.3.2 設計・開発の計画
8.3.4 設計・開発の管理
8.3.6 設計・開発の変更

以上