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JIS Q 45100労働安全衛生MS規格6 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.170 ■□■    
*** JIS Q 45100労働安全衛生MS規格6 ***
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前回から、2018年9月28日に公示されたJIS Q 45100(JISα)について
お話ししていますが、今回はその6回目です。
JISαには、OHSAS18001と同様に「リスクアセスメント(Risk assessment)」の
要求があります。
しかし、JISQ45001(ISO45001)には、リスクアセスメントの要求は無く、
「リスクの評価(Assessment of Risk)」の要求となっています。
両者には微妙に違いがあることをご理解ください。

■□■ JISQ45100の箇条6、7の概要 ■□■

【6.2.2.1 実施事項に含めなければならない事項 】
組織は,労働安全衛生目標を達成するための計画に,6.1.1で決定し,
計画した取組みの中から,次の全ての項目について実施事項に含めなければならない。

a) 法的要求事項及びその他の要求事項を考慮に入れて決定した取組み事項及び実施時期
b) 労働安全衛生リスクの評価を考慮に入れて決定した取組み事項及び実施時期
c) 安全衛生活動の取組み事項(法的要求事項以外の事項を含むこと)及び実施時期
d) 健康確保の取組み事項(法的要求事項以外の事項を含むこと)及び実施時期
e) 安全衛生教育及び健康教育の取組み事項及び実施時期
f) 元方事業者にあっては,関係請負人に対する措置の内容に関する取り組み事項及び実施時期

≪解説≫
この箇条はJISαに独自の追加要求事項です。厚労省指針第12条(安全衛生計画の作成)と
整合がとられています。箇条6.2.2.1 a)~f)は、箇条6.1.1一般のJISαで追加された
a)~f)に対応して、取り組む事項及び実施時期を決定することを求めています。

a) 法的要求事項の例としては、リスクアセスメント(厚労省指針解釈通達で求めている)、
  過重労働、健康診断、ストレスチェックなどが上げられます。
b)リスクを評価した結果に対応して、組織が実施する内容と実施時期を求めています。
c)安全衛生活動の例としては、安全衛生パトロール、ヒヤリハット活動などがあります。
d)健康確保の取組みとしては、手洗い励行、予防注射推奨、インフルエンザ、ノロウイルス対策
などがあります。
e)安全衛生教育及び健康教育の例としては、メンタルヘルス教育、避難方法教育、
個人用保護具の使用に関する教育などがあります。
f)建設業においては、元方事業者の関係請負人に対する措置の取組みを明確にする
ことが必要です。具体的な内容には、次のようなものがあります。
・構内協力会社の従業員、監督者、管理者などに対しての安全衛生教育の実施
・構内協力会社などと合同で行う安全パトロールに実施

【7 支援 】
【7.1 資源 】
JIS Q 45001:2018の7.1を適用する。

【7. 2 力量 】
(JISQ45001の箇条7.2が引用されている)
組織は,安全衛生活動及び健康確保の取組みを実施し,維持し継続的に改善するため,
次の事項を行わなければならない。

e) 適切な教育,訓練又は経験によって,働く人が,安全衛生活動及び健康確保の取組みを
適切に実施するための力量を備えていることを確実にする。
f) 適切な教育,訓練又は経験により,システム各級管理者が,安全衛生活動及び健康確保の
取組みの有効性を適切に評価,管理するための力量を備えていることを確実にする

≪解説≫
箇条7.2力量には、e)、f)に二つの追加要求事項があります。
e)は力量の対象を「安全衛生活動や健康確保の取組みに関する力量」と明確にしています。
また、f)ではシステム各級管理者に求められ力量を要求していますが、それは安全衛生活動
及び健康確保の取組みの有効性を評価したり、管理するための力量です。
有効性の評価は、各級システム管理者が個別に実施するのではなく、組織として統一した基準、
方法を決めておくとよいと思います。

【7.3 認識 】
JIS Q 45001:2018の7.3を適用する。

【7.4 認識 】
JIS Q 45001:2018の7.4を適用する。

【7.5 文書化した情報 】
【7.5.1 一般 】
JIS Q 45001:2018の7.5.1を適用する。

【7.5.1.1 手順及び文書化 】

組織は、5.4、6.1.2.2、7.5.3、8.1.1、8.1.2、9.1.1、10.2によって策定する手順については、
少なくとも次の事項を含まなければならない。

a) 実施時期
b) 実施者又は担当者
c) 実施内容
d) 実施方法
組織は、5.4、6.1.2.2、7.5.3、8.1.1、8.1.2、9.1.1、10.2によって策定した手順については、
文書化した情報として維持しなければならない

≪解説≫
この箇条はJISαに独自の箇条です。JIS Q45001では手順の定義に「定義は文書化してもしなくてもよい」
との記載がありますが、JISαでは一歩踏み込んで手順書の作成を箇条5.4、6.1.2.2、7.5.3、8.1.1、
8.1.2、9.1.1、10.2に求めています。手順書に含めるべき項目としてa)~d)の4項目を規定しています。

a)何時やるか
b)誰がやるか
c)何をやるか
d)どのようにやるか

JISαが文書化した情報(手順書)を要求している箇条のタイトルは次の通りです。
5.4「働く人の協議及び参加」
6.1.2.2「労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他のリスクの評価」
7.5.3「文書化した情報の管理」
8.1.1「運用の計画及び管理 一般」
8.1.2「危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減」
9.1.1「モニタリング、測定、分析及びパフォーマンス評価一般」
9.2.2 「内部監査プログラム」
10.2「インシデント、不適合及び是正処置」

JIS Q 45100労働安全衛生MS規格2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.166 ■□■    
*** JIS Q 45100労働安全衛生MS規格2 ***
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9月28日に公示されたJIS Q 45100について、
今回はその2回目の説明をします。

JIS Q 45100とJIS Q 45001は読んでいて区別しづらいという声があり
ましたので、これからはJIS Q 45100をJISαと簡略化して説明して
いきます。

■□■ JISαの箇条4.4概要 ■□■

【箇条4.4 労働安全衛生マネジメントシステム】
JIS Q 45001:2018 の箇条4 を適用する。

≪解説1≫

JISα箇条4全体は、JIS Q 45001の箇条4を適用することになって
いますので、JISα箇条4.4も当然JIS Q 45001を適用することに
なります。

JIS Q 45001の箇条4.4 では、“組織は,この規格の要求事項に従って,
必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む,労働安全衛生マネジメント
システムを確立し,実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければ
ならない。”と要求しています。

“労働安全衛生マネジメントシステムを確立”とは、OH&SMSを計画(設計)
することですが、上記要求事項によると、プロセスとプロセス同士の
相互作用も計画(設計)しなければなりません。

ISO 45001が具体的に要求しているプロセスは、以下の14箇条に現れてきます。

・箇条5.4    働く人の協議及び参加「協議及び参加のためのプロセス」
・箇条6.1.2.1 危険源の特定「継続的に先取りして特定するための
        プロセス」
・箇条6.1.2.2 労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに
        対するその他のリスクの評価「次の事項のためのプロセス」
・箇条6.1.2.3 労働安全衛生機会及び労働安全衛生マネジメントシステムに
        対するその他の機会の評価「次の事項を評価するためのプロセス」
・箇条6.1.3  法的要求事項及びその他の要求事項の決定「次の事項のための
        プロセス」
・箇条7.4.1  一般「内部及び外部のコミュニケーションに必要なプロセス」
・箇条8.1.1  一般「労働安全衛生マネジメントシステムの要求事項を満たし、
        箇条6で決定した取組みを実施するために必要なプロセス」
       (英文ではshall plan, implement, control and maintain the processes
        となっているが、ここではplanとestablishは同義であるとして
        規格が要求しているプロセスとして取り上げる)
・箇条8.1.2  危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減「危険源の除去及び
        労働安全衛生のリスクの低減をするためのプロセス」
・箇条8.1.3  変更の管理「変更の実施及び管理のためのプロセス」
・箇条8.1.4.1 一般「調達を管理するプロセス」
・箇条8.2   緊急事態への準備及び対応「準備及び対応のために必要なプロセス」
・箇条9.1.1  一般「モニタリング,測定,分析及びパフォーマンス評価,のための
        プロセス」
・箇条9.1.2  順守評価「順守を評価するためのプロセス」
・箇条10.2   インシデント,不適合及び是正処置「インシデント及び不適合を決定し
        管理するためのプロセス」

≪解説2≫

プロセスはJIS Q 45001箇条3.25に“インプットをアウトプットに
変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動”と定義
されています。

プロセスは、何かをインプットし、何かをアウトプットする活動の
一連ですから、規格が要求している14のプロセスにおいては、イン
プットとアウトプットを決めなければなりません。当然のことですが、
組織がこの14のプロセス以外のプロセスを追加することは、組織の
自由です。

さて、プロセスの大きさ、すなわち一連の活動の大きさをどの位に
するかは、次の2項目の観点が重要であるといわれています。

1. 管理できること

プロセスをあまり大きく設定すると、活動が膨大なものになり
管理することができなくなる。

2. 価値が付くこと

プロセスをあまり小さく設定するとその活動には価値が付かない。
初心者に手を取り、足を取るように詳細に活動を分解してもあまり
意味がない。

また、前述の14のプロセス(組織が追加したものを含めて)は、
組織の事業プロセスに統合されなければなりません(箇条5.1c)参照)。
これらのプロセスは、組織の日常的な活動(すなわち事業プロセス)の
中に統合されて実施されるべきものであり、そうでないと二重の仕組み
になることによりOH&SMSが形骸化してしまう危険性が高まると規格は
危惧しています。

JIS Q 45100労働安全衛生MS規格1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.165 ■□■
*** JIS Q 45100労働安全衛生MS規格 ***
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今回からは規格発行が9月末に予定されているJIS Q 45100について、
数回に分けてお話ししたいと思います。

■□■ JIS Q 45100の概要 ■□■

ISO/PC283(OH&SMS技術専門委員会)の国際会議において、日本の提案
(5S、ヒヤリハット、危険予知訓練などの日常活動)は、詳細すぎると
いうことで採用には至りませんでした。

このような国際規格(ISO 45001→JIS Q 45001)発行の背景から、
ISO 45001の効果的な運用を図るためには、日本独自の安全衛生活動等を
取り入れた、もう一つのJISの開発をすることがよいのではないか、と
いう検討がはじまりました。

日本独自の安全衛生活動とは、リスクアセスメント、5S、危険予知訓練、
ヒヤリハット訓練などの日常安全衛生活動のことですが、これは1999年
発行の“労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(以下厚労省指針)”
に盛り込まれています。

厚労省指針にはあってISO 45001にない項目を抽出して、JIS Q 45001に
追加した規格がJIS Q 45100です。

■□■ JIS Q 45100運用の意義 ■□■

JIS Q 45100は、前述のとおり日本独自の安全衛生活動をベースに作成
されていることから、JIS Q 45100の要求事項は既に組織で実施されて
いることが多いと思います。

多くの組織では、既にJIS Q 45100を運用するための準備はできている
と言えると思います。

JIS Q 45100はISO 45001(JIS Q 45001)と一体で運用するための規格で
あることから、JIS Q 45100単独での認証取得は考えられていません。

JIS Q 45001を既に運用している組織がJIS Q 45100認証をめざしても良いし、
JIS Q 45001とJIS Q 45100の2つの認証を同時にめざしても良いことに
なっています。

JIS Q 45001の国際通用性を担保しつつ、労働災害防止に効果を上げてきた
日本独自の安全衛生活動を含むJIS Q 45100に一体で取組むことにより、
労働災害の減少、安全衛生水準の更なる向上を図ることが期待されます。

■□■ JIS Q 45100の解説 ■□■

以下に意見公告で公表されたJIS Q 45100を【】にサマリーし、それに
対する私の解説を≪≫に記します。

【序文】

ISO 45001:2018 の一致規格であるJIS Q 45001:2018 の要求事項には,
厚生労働省の“労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針”で
求められている,安全衛生活動などが明示的には含まれていない。
JIS Q 45001:2018 と一体で運用することによって,働く人の労働災害
防止及び健康確保のために実効ある労働安全衛生マネジメントシステム
を構築することを目的としている。

≪解説≫

JIS Q 45100はJIS Q 45001と一体で運用される規格であることから、
JIS Q 45001の要求事項に加筆する表記となっています。そのため、
JIS Q 45100としての追加要求事項がある場合は、まずJIS Q 45001本文が
引用されており、その後にJIS Q 45100の要求事項が加筆されています。
ただ、全く同じ場合は、【JIS Q 45001:2018 の ○○ を適用する】と
記載されています。

用語の定義はISO 45001と同じでJIS Q 451001独自に定義された用語は
ありません。

【適用範囲】

JIS Q 45001:2018 の要求事項に加えて,より具体的で詳細な追加要求事項
について規定する。

≪解説≫

なし

【引用規格】

JIS Q 45001:2018 労働安全衛生マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引

≪解説≫

なし

【用語及び定義】

JIS Q 45001:2018による。

≪解説≫

なし

【箇条4 組織の状況】

JIS Q 45001:2018 の箇条4 を適用する。

≪解説≫

”組織はOH&SMSの構築に当たって、”労働安全衛生マネジメントシステムの
意図した成果”を決めることがJIS Q 45001に要求されています。
この、”労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果” は、組織に
よって異なります。

序文「0.2労働安全衛生マネジメントシステムの狙い」の中に示されている
ように、「働く人の負傷及び疾病を防止すること,及び安全で健康的な職場を
提供すること」が規格の意図するところです。

また、JIS Q 45001箇条1適用範囲には、次のようにも記述されています。
「この規格は,組織が労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を
達成するために役立つ。労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果は,
組織の労働安全衛生方針に整合して,次の事項を含む。

a) 労働安全衛生パフォーマンスの継続的な改善

b) 法的要求事項及びその他の要求事項を満たすこと

c) 労働安全衛生目標の達成」

この記述も組織が意図して成果を決める参考になります。
これらJIS Q 45001規格に書かれていることを参考に、組織固有の“意図した成果”
を決め、労働安全衛生方針、労働安全衛生目標に反映させると良いでしょう。