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ISO9001における設計・開発 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.109 ■□■   
*** ISO9001における設計・開発 ***
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■□■ 再び設計・開発 ■□■
横浜のマンションに関連して、杭打ち工事の報道が止みません。毎日の報道に接し
「杭を打つという仕事の設計、あるいは手順はどうあるべきか」考えさせられます。

■□■ ISO9001における設計・開発の定義 ■□■
ISO9001:2015改正においては、設計・開発の定義が以下のように変更になりました。

「対象に対する要求事項を,その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連の
プロセス」(ISO9000:2015箇条3.4.8)

ここでいう対象は杭打ち工事になります。そうすると、要求事項をより詳細な要求事
項に変換するとは何を意味するのでしょうか?

※ ちなみに、2008年版では「要求事項を,製品,プロセス又はシステムの,規定さ
れた特性又は仕様書に変換する一連のプロセス」(ISO9000:20108箇条3.4.4)となっ
ていた。

ISOの定義はとかく難解で評判がよくないのですが、設計・開発については、2015年
版の定義は2008年版より理解しやすい定義になったのではないでしょうか。

■□■ より詳細な要求事項? ■□■
上記設計・開発の定義の中に出てくる要求事項は、「明示されている,通常暗黙のう
ちに了解されている又は義務として要求されている,ニーズ又は期待」
(ISO9000:2015箇条3.6.4)です。

今回の事件でいえば、「杭を打つという仕事のニーズと期待」が要求事項になりま
す。その要求事項は明示されている場合もありますが、通常暗黙のうちに了解されて
いる又は義務として要求されているものを含みます、というのがISOの定義です。

設計・開発は「要求事項をより詳細にする活動(プロセス)」だとISOでは言ってい
る(定義している)のですが、より詳細のレベルは組織の持つ固有技術、技能などに
よってさまざまであろうと思います。

■□■ 設計・開発の注記 ■□■
今回のISO9001:2015の定義は、附属書SL※の規定により、注記は定義の一部を成す
(NOTE ○○ to entry)とされましたので、注記の3つを調べてみたいと思いま
す。

注記1
「設計・開発へのインプットとなる要求事項は,調査・研究の結果であることが多
く,また,設計・開発からのアウトプットとなる要求事項よりも広範で,一般的な意
味で表現されることがある。要求事項は,通常,特性を用いて定義される。プロジェ
クトには,複数の設計・開発段階が存在することがある。」

ここでのポイントは「要求事項は,通常,特性を用いて定義される。」でしょう。
杭打ち工事においては、どんな特性が要求されていたのでしょうか。

■□■ 注記の2 ■□■
注記1につづいて注記の2には、設計という用語と開発という用語について触れてい
ます。通常、開発というと「研究開発」を思い浮かべ、設計より前の段階であると思
う人もいるかもしれませんが、開発は設計と同じ段階であるとして、ISOでは以下の
ように定義しています。

注記2
「注記2 “設計”,“開発”及び“設計・開発”という言葉は,あるときは同じ意味
で使われ,あるときには設計・開発全体の異なる段階を定義するために使われる。」

■□■ 注記の3 ■□■
設計・開発の注記3には、いろいろな設計・開発があるとして次のように定義されて
います。

注記3
「設計・開発されるものの性格を示すために,修飾語が用いられることがある[例 
製品の設計・開発,サービスの設計・開発又はプロセスの設計・開発]」

杭打ち工事を考えると、注記3でいう「プロセスの設計・開発」が該当するものと思
われます。

今回の事件は、施工における設計・開発を考えるよい機会になると思います。