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マネジメントシステム規格共通文書2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.53  ■□■

*** マネジメントシステム規格共通文書2 ***

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日本規格協会のHPに共通文書の日本語訳が掲載されました。

この翻訳に意見のある方は誰でもコメントを寄せることができま
すので、HPから共通テキストをダウンロードしてみてください。

この共通文書の発行は、マネジメントシステム規格(Management
 System Standard:MSS、以下MSSと呼称する)の世界において
は画期的なことであると思います。

なぜ画期的かその理由は、一つに規格ユーザーの利便にあると思
います。

MSSの嚆矢と目されるものは、1987年に発行されたISO9001規格で
す。以降、2012年まで25年の間に10を超えるMSSが誕生しました。

歴史的に上げてみると、ISO9001、ISO14001、ISO27001、
OHSAS18001(労働安全衛生については準ISOとしての扱い)など
が、MSSとして登場しました。

その後もこの動きは続き、最近ではISO50001(エネルギーマネジ
メント)、ISO22301(事業継続マネジメント)、ISO39001(道路
交通安全マネジメント:2012年末発行予定)と続いています。

■□■ 共通テキスト化のポイント ■□■

ISO/IEC Directive の一部に組み込まれたMSSのポイントは5
つあると考えています。

1.どのMSSにもある普遍的な箇条の文章が共通化されたこと。
2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと。
3.MSSを導入する前提を明確にすることが問われるようになっ
たこと。
4.要求事項をビジネスプロセスに統合することが要求されてい
ること。
5.リスクの考え方が導入されたこと。

細部にわたっては、多くのポイントがありますが、今回の共通文
書化のポイントを大きなものから5点あげよ、と問われるならば
以上のとおりです。

■□1.どのMSSにもある普遍的箇条の文章が共通化されたこと■□

ざーっと共通文書をみたとき、次の項目がすべてのMSSの共通の
文章になったことに気がつきます。
 
 ・経営者の責任
 ・方針管理
 ・目標管理
 ・責任権限
 ・コミュニケーション
 ・教育訓練
 ・文書管理
 ・記録の管理
 ・内部監査
 ・マネジメントレビュー
 ・是正処置
 ・予防処置(共通文書ではリスク及び機会への取組み)
 ・継続的改善

■□2.MSSの構造の統一と用語定義の共通化がなされたこと■□ 

MSS共通文書の構成は、前回もふれましたが
次のようになっています。

1. 適用範囲
2. 引用規格
3. 用語及び定義
4 組織の状況
5 リーダーシップ
6 計画
7 支援
8 運用
9 パフォーマンス評価
10 改善

また、今回定義された用語は次のとおりです。

1.organization
2.interested party
3.requirement
4.management system
5.top management
6.effectiveness
7.policy
8.objective
9.risk
10.competence
11.documented information
12.process
13.performance
14.outsource
15.monitoring
16.measurement
17.audit
18.conformity
19.nonconformity
20.correction
21.corrective action
22.continual improvement

以上

マネジメントシステム規格共通文書1 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.52 ■□■ 

*** マネジメントシステム規格共通文書1 ***

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ISO9001、ISO14001規格は2015年を目標に次期改定の作成作業に入っていますが、
そのベース文書となるMSS(Management System
Standard:マネジメントシステム規格)共通文書が正式に発効しました。

ISOは2012年5月2日にMSS共通文書をISO/IECのDirective Part1の一部に編纂したと
発表しました。

ISOは8年前(2006年)から、全てのマネジメントシステム規格は基本構造、用語、共通部分の文言、
構成は同じものにするというポリシーのもと、特別委員会(JTCG:Joint Technical Coordination Group)で
検討を進められてきましたが、そのガイド規格が成立したのです。

このMSS共通文書は、8年の間紆余曲折をへるなか、あるときはJTCG共通文書(N316)、あるときはI
SO Guide83、あるいはHLS(High Level Structure)とか呼ばれてきましたが、今回の処置でISO Directiveの
一部になったことになります。

■□■ ISO/IEC Directiveとは何 ■□■
ISO/IEC Directive とは、ISO(及びIEC:International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議;電気工学、
電子工学、および関連した技術を扱う国際的な標準化団体であり電気関係の標準化はこちらが扱う)が発行する
指示文書であり、ISO/IECが規格作成から正式発行にいたるまでの必ず守らなければならないルールを規定した
国際的なガイドブックです。

ISO/IECが発行しているDirectiveにはいくつかのPartがありますが、Part1は規格を新しく発行したり、改定したりするときの
ルールを定めた約160ページの指示書です。
Part1には付属書が29もあり、大半が規格を作るための具体的な手順を規定しています。
例えば、次のようなことに関する手順が決められています。
 ・ISO規格を作る手順
・専門技術委員会の議長、主査の決め方
 ・各国言語に関するルール
 ・TC(Technical Committee)、SC(Sab Committee)などの構成
 ・PC(project committee)の設立方法
 ・規格作成各段階における投票方法、承認基準
 ・開催国(ホスト国)の決め方
 ・各種様式(規格作成段階で使用される書式)

このような一連の手順書の中の一部に、今回MSS共通文書が次のようなタイトルで編纂されました。
“Guidance on the development process and structure of a
MSS‐High level structure, identical core text and common
terms and core definitions for use in Management System
Standard”

■□■ ISO/IEC Directiveは誰が使う文書 ■□■ 
ISO/IEC Directiveは、規格を作成する関係者、各国の標準団体(日本では、日本規格協会)、政府関係者、
TC、SCなどの属する規格作成が使用するガイドです。

これから作成するMSS規格は改定、新規作成を問わず、このMSS共通文書を必ず使用しなければなりません。
MSS共通文書は規格作成者向けの文書ですが、当然のことながら規格使用者、各種のユーザーにも参考になる文書です。

つなげるツボでは、これから何回かに分けてMSS共通文書の解説をしていきたいと思います。

■□■ MSS共通文書の構成 ■□■ 
MSS共通文書の構成は次のようになっています。
1. 適用範囲
2. 引用規格
3. 用語及び定義
4 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
4.3 XXXマネジメントシステムの適用範囲の決定
4.4 XXXマネジメントシステム
5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.2 方針
5.3 組織の役割,責任及び権限
6 計画
6.1 リスク及び機会への取組み
6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定
7 支援
7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化された情報
7.5.1 一般
7.5.2 作成及び更新
7.5.3 文書化された情報の管理
8 運用
8.1 運用の計画及び管理
9 パフォーマンス評価
9.1 監視,測定,分析及び評価
9.2 内部監査
9.3 マネジメントレビュー
10 改善
10.1 不適合及び是正処置
10.2 継続的改善

このように、マネジメントシステム規格に網羅すべき項目をすべて網羅しており、分野ごと(9001、14001、27001、
OHSAS18001とか)に必要となる規定は、主に「8 運用」のなかに規定されることになります。

その他のところにも、分野ごとどうしても追加したいことがあれば、ISO/TMB(Technical Management Board)へ
報告することで許されることになっています。

次回から各章の説明をしていきたいと思います。