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医療のマネジメントシステム | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.8 ■□■
 
  *** 医療のマネジメントシステム ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は近年話題になっている「医療のマネジメントシステム」
について話をさせていただきます。

宜しくお願いいたします。

■□■ 医療の世界にQMS ■□■

マネジメントシステムは医療の世界にどうして必要なのでしょ
うか。

医療の世界にQMSが必要ではないかとの投げかけは、10年
くらい前からありました。

ここ10年、医療のミスは多くのマスコミに取り上げられ、一
つの大きな社会問題となっています。

組織がマーケットに期待される製品(サービスを含む)を提供
するためには、固有技術とそれを活かす管理技術の双方が必要
ですが、このことは医療の世界においても全く同じです。

医療の質、安全を実現するためには、医療における固有な業務
を可視化、構造化、標準化することが必要ですし、それらの標
準化された業務を組織全体に応用する質マネジメントシステム
モデルの構築が必要なのです。

昨年、東大病院の永井前院長に医療の質についてお話を伺った
ことがありますが、全国の病院でどの位の医療ミスが起きてい
るか、その全貌はまだ十分に見えているとは言えないようです。

医療ミスの定義、医療組織への周知、データ収集、データ分析
などが徹底されないと医療ミスの統計はきちんと取れません。

■□■ QMS-H 研究会 ■□■

3月7、8日と東京大学で行われたQMS-Hシンポジウムの
発表会を聴いてきました。QMS-Hとは“Quality centered
Management System for Healthcare ”の略で正式には「医療
における質中心経営管理システムと導入推進のモデル開発研究
会」というものです。

東京大学飯塚悦功教授が主査、早稲田大学棟近雅彦教授が副査
をつとめている研究会で、多くの病院と大学との産学連動の研
究会です。

月1回、大学で参加病院と研究者の会合が持たれ、医療QMS
モデル開発についての議論と進捗状況が検討されています。

■□■ こんな研究が行われている ■□■

今回の発表は以下のようなものでした。

● QMSの新規導入・推進
  -大久野病院(慢性期療養型病院、174床)
  -仙台医療センター(急性期総合病院、698床)
  -前橋赤十字病院(急性期総合病院、592床)
  -武蔵野赤十字病院(急性期総合病院、611床)
● QMSの継続的導入・推進
  -(株)麻生 飯塚病院(急性期総合病院、1165床)
● QMSの再構築
  -城東中央病院(急性期総合病院、233床)
  -(株)日立製作所水戸総合病院(急性期総合病院、21
5床)

今回のシンポジウムは、病院が質のよい医療を提供するために
はQMSに基づく業務の進め方の研究が必要であるとして、そ
の経過と結果の発表を上述の7病院と大学の両者が行ったもの
です。

QMSに基づく業務の進め方については、次のような研究発表
がありました。
  与薬実施手順書、処方箋監査マニュアル、院内感染対策標
準、クリニカルパスの文書体系・管理について

また、業務で使用する資源についての研究発表では次のような
ものがありました。
  輸液ポンプ、人口呼吸器、ストレッチャー、与薬カート、
自動検査装置などの設備管理、精度管理について

■□■ QMSの構築 ■□■

これらの発表で分かったことは、QMS(Quality centered Ma
nagement System)の構築においては、まず最初に主要業務のプ
ロセスフローチャート(PFC)を作成することが大切である
ということでした。

業務をフローチャートにして関係する者が共有するということ
は、製造業では当たり前ですが、病院ではこれから推進してい
こうという動きです。

まず、病院では標準化という概念が希薄です。理由は、状態の
異なる患者さんを相手にするのだから、工業製品と違って標準
化なんかできないという思いがあるのです。

標準化とは次のことをいいます。
 ・単純化する
 ・少数化する
 ・秩序化する

複雑で、ばらばらなものが無秩序にあったら、どんなものでも
うまくいくはずはありません。

■□■ プロセスフローチャート(PFC) ■□■

病院の業務の可視化、といっても対象はたくさんあります。そ
の業務を構造化し、標準化していくとなると容易ならざる仕事
です。

でも「隗よりはじめよ」と足元の業務からPFCを作成した発
表が多くありました。実際にPFC作成を行ったのは実務をこ
なしている看護師の人たちです。

標準化に取り組むといってもこれまで実際の経験のない人たち
ですから、困惑したことと思いますが、毎日の多忙な業務の中
で困難を極めながらもPFC作成にチャレンジした若い人たち
の姿は感動的でさえありました。

このような事ができたのは、病院長の強いリーダーシップがあ
ったからで、「本当に医者を巻き込むのですか?」と問うと、
「Yes」とはっきり応えてくれるトップがいてくれたからできた
という話でした。

全部で7つの病院と大学の発表を聞いたのですが、私が産業界
で経験したことと全く同じことが遅れてではありますが、やっ
と医療の世界に及んできたのかと感激を覚えました。

今回のシンポジウムに参加して、我々が関係している産業界も
医療の世界もQMSということでは強く繋がっているのだなぁ
と改めて感じました。