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いいものは設計がいい | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.22  ■□■

  *** いいものは設計がいい ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は「いいものは設計がいい」についてお話をしたいと思い
ます。「設計(design)」は工業製品だけでなく、サービス提供
あるいはマネジメントシステム構築にも重要なものです。

今回も宜しくお願いいたします。

■□■ 高層建築時代 ■□■

この不景気な時代に首都圏では続々と高層ビルが建設されて
います。首都圏のみならず地方都市にもこの波は順次波及して
いくとみてよさそうです。

狭い国土を有効に使おうとすれば、上に伸びていかざるをえない
ということで、技術の進歩とともに日本にも本格的な高層建築
時代がきたようです。

そこで心配になるのは、地震対策です。震度7とか8とか、
大きな地震が来たときに本当に大丈夫なのでしょうか。

素人からみても免震構造だとか耐震設計だとかいわれると、
ポイントは構造設計にあると感じます。

残念ながら、よい構造設計とはどんな設計かは我々にはよく
分かりません。数年前、偽装構造計算問題(姉歯問題)が発覚
したとき、専門家でも本当のところは見抜けないことが分かり
ました。

■□■ 最近の家電は故障が多い ■□■

家電製品について、ここ10年くらいの実感ですが、昔はなかった
ような故障がけっこう多く目立ちます。

データを持ち合わせているわけではありませんが、いろいろな
家電製品が次から次へと市場に登場するなか、品質管理が
しっかりできているか心配です。

新製品サイクルが短くなる、すなわち直ぐに次製品を立ち上げ
ざるを得なくなってくると、初期流動品質を把握、改善する時間が
確保できなくなります。

設計者に初期流動時に起きた品質不良情報が的確に伝わらない
と、次期新製品へのフィードバックがされなくなります。

マーケット構造の変化、すなわちハイスピード社会に適合した
製品設計が望まれるところです。

■□■ 電子化された自動車 ■□■

私はここ数年の間に自動車を2回替えました。少ない経験ですし、
日本車、外車による違いもありますので一概には言えないの
ですが、電装関係のトラブルが多いような気がします。

私が経験したトラブル4件のうち、半分は自分が新しい機能を
理解していなかったことが原因でした。しかし残り2回は明らかに
車の方の問題であったと思っています。

昨今の車のコンピュータ化には目覚しいものがありますが、
それに対するユーザーの知識は十分ではないように思います。
私が特殊なのではなく、60歳代のユーザーは大体私程度の知識
しかないのではないかと思います。

かつての自動車はもっとわかり易かった、単純で機能本位で
あったかと思います。ところが、コンピュータ(マイコン)の発明で
いろいろな機能が追加され、しかも以前からあった機能との
オーバーラップが存在します。

ユーザーにわかり易い、使い易い製品の設計こそがよい設計
です。

■□■ 組織のシステム ■□■

組織構造を考えるときにも「設計」に留意する必要があります。
歴史ある長い組織では往々にして、継ぎ足しの組織構造に
なっています。

現実の組織構造は無視できないものですが、純粋に論理的に
組織構造を設計してみることも重要なことです。

組織のシステムは、多くの要素からできています。例えば、人、
設備、建物、材料、部品、手順書、規定書などですが、それらが
お互いに「繋がっている」ことがポイントです。

システムとは繋がっていること、このメルマガのタイトルは
「つなげるツボ」ですが、つながるように設計することが重要
です。

マネジメントシステムも同様です。例えばQMS(品質マネジメン
トシステム)ですと、組織にあるQMSに必要な「プロセス」を明
確にすることから設計は始まります。

医療のマネジメントシステム | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.8 ■□■
 
  *** 医療のマネジメントシステム ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は近年話題になっている「医療のマネジメントシステム」
について話をさせていただきます。

宜しくお願いいたします。

■□■ 医療の世界にQMS ■□■

マネジメントシステムは医療の世界にどうして必要なのでしょ
うか。

医療の世界にQMSが必要ではないかとの投げかけは、10年
くらい前からありました。

ここ10年、医療のミスは多くのマスコミに取り上げられ、一
つの大きな社会問題となっています。

組織がマーケットに期待される製品(サービスを含む)を提供
するためには、固有技術とそれを活かす管理技術の双方が必要
ですが、このことは医療の世界においても全く同じです。

医療の質、安全を実現するためには、医療における固有な業務
を可視化、構造化、標準化することが必要ですし、それらの標
準化された業務を組織全体に応用する質マネジメントシステム
モデルの構築が必要なのです。

昨年、東大病院の永井前院長に医療の質についてお話を伺った
ことがありますが、全国の病院でどの位の医療ミスが起きてい
るか、その全貌はまだ十分に見えているとは言えないようです。

医療ミスの定義、医療組織への周知、データ収集、データ分析
などが徹底されないと医療ミスの統計はきちんと取れません。

■□■ QMS-H 研究会 ■□■

3月7、8日と東京大学で行われたQMS-Hシンポジウムの
発表会を聴いてきました。QMS-Hとは“Quality centered
Management System for Healthcare ”の略で正式には「医療
における質中心経営管理システムと導入推進のモデル開発研究
会」というものです。

東京大学飯塚悦功教授が主査、早稲田大学棟近雅彦教授が副査
をつとめている研究会で、多くの病院と大学との産学連動の研
究会です。

月1回、大学で参加病院と研究者の会合が持たれ、医療QMS
モデル開発についての議論と進捗状況が検討されています。

■□■ こんな研究が行われている ■□■

今回の発表は以下のようなものでした。

● QMSの新規導入・推進
  -大久野病院(慢性期療養型病院、174床)
  -仙台医療センター(急性期総合病院、698床)
  -前橋赤十字病院(急性期総合病院、592床)
  -武蔵野赤十字病院(急性期総合病院、611床)
● QMSの継続的導入・推進
  -(株)麻生 飯塚病院(急性期総合病院、1165床)
● QMSの再構築
  -城東中央病院(急性期総合病院、233床)
  -(株)日立製作所水戸総合病院(急性期総合病院、21
5床)

今回のシンポジウムは、病院が質のよい医療を提供するために
はQMSに基づく業務の進め方の研究が必要であるとして、そ
の経過と結果の発表を上述の7病院と大学の両者が行ったもの
です。

QMSに基づく業務の進め方については、次のような研究発表
がありました。
  与薬実施手順書、処方箋監査マニュアル、院内感染対策標
準、クリニカルパスの文書体系・管理について

また、業務で使用する資源についての研究発表では次のような
ものがありました。
  輸液ポンプ、人口呼吸器、ストレッチャー、与薬カート、
自動検査装置などの設備管理、精度管理について

■□■ QMSの構築 ■□■

これらの発表で分かったことは、QMS(Quality centered Ma
nagement System)の構築においては、まず最初に主要業務のプ
ロセスフローチャート(PFC)を作成することが大切である
ということでした。

業務をフローチャートにして関係する者が共有するということ
は、製造業では当たり前ですが、病院ではこれから推進してい
こうという動きです。

まず、病院では標準化という概念が希薄です。理由は、状態の
異なる患者さんを相手にするのだから、工業製品と違って標準
化なんかできないという思いがあるのです。

標準化とは次のことをいいます。
 ・単純化する
 ・少数化する
 ・秩序化する

複雑で、ばらばらなものが無秩序にあったら、どんなものでも
うまくいくはずはありません。

■□■ プロセスフローチャート(PFC) ■□■

病院の業務の可視化、といっても対象はたくさんあります。そ
の業務を構造化し、標準化していくとなると容易ならざる仕事
です。

でも「隗よりはじめよ」と足元の業務からPFCを作成した発
表が多くありました。実際にPFC作成を行ったのは実務をこ
なしている看護師の人たちです。

標準化に取り組むといってもこれまで実際の経験のない人たち
ですから、困惑したことと思いますが、毎日の多忙な業務の中
で困難を極めながらもPFC作成にチャレンジした若い人たち
の姿は感動的でさえありました。

このような事ができたのは、病院長の強いリーダーシップがあ
ったからで、「本当に医者を巻き込むのですか?」と問うと、
「Yes」とはっきり応えてくれるトップがいてくれたからできた
という話でした。

全部で7つの病院と大学の発表を聞いたのですが、私が産業界
で経験したことと全く同じことが遅れてではありますが、やっ
と医療の世界に及んできたのかと感激を覚えました。

今回のシンポジウムに参加して、我々が関係している産業界も
医療の世界もQMSということでは強く繋がっているのだなぁ
と改めて感じました。