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品質不祥事に思うー標準化について5 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.176 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について5 ***
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標準化はあらゆるところで適用されるべき、極めて汎用的な品質管理の
ツールです。製品・サービスの質に始まり、仕事、組織、整理整頓、活動、
分析、評価など各種領域で活用可能なものです。

いま世間を騒がせているデータ改ざんなどの品質不祥事も、標準化の概念が
浸透していればこうまで酷くはならなかったのではないかと思います。
Bメーカーを例にして、標準を守って業務を遂行することを考えたいと思います。

■□■ 品質保証体系図の作成 ■□■

標準化のツールで外せないものが品質保証体系図です。
組織の品質保証がどのようなプロセスで、どの部署の責任下で行われるのかを
「顧客との契約から顧客に納入するまでの全体」を網羅してチャートとした
ものです。

品質保証体系図を制定する際に重要なことは、チャート縦の流れの各ステップに
おいて、一つのステップから次のステップに移行する際の判定基準を明確にして
おくことです。

部署間の責任の所在をあいまいにしておくと、組織的な活動が適切に進みません。
次ステップに進んでもよいかを決める移行判定者を決めておくことが大切です。
この体系図を作成することの利点は、次のようなものです。

1.各部署の役割を明らかにすることによって、組織的な活動を効率よく、
 かつ効果的に進めることができる。
2.トラブルが発生したとき、トラブルの責任部署及び関係する部署が明らかに
 なること から、迅速な対応が可能となる。
3.内部監査を実施する時の案内として使える。
4.取引先やユーザーに対して自社の品質保証活動の進め方や特徴をわかりやすく
 明示することができる。
5.部署間の役割、認識に問題が生じた時の整理に役立てることができる。

■□■ プロセスアプローチ ■□■

プロセスアプローチはISO9001:2015で強化された概念ですが、標準化を
推進するのに重要な概念です。

プロセスアプローチは日本で展開されてきた「品質は工程で作り込む」という
考えに立っています。TQMでいう工程管理に通じる概念でもあり、プロセスを
明確にしてコントロールする要素を可視化して工程(プロセス)を適切に管理
しようとするツールです。
製造業に特化したものと考えがちですが、決してそんなことはなくサービス業の
標準化にも使えるツールです。

不良品や不良サービスをつくらないためには、製品・サービスの品質保証に関係
する総てのプロセス(企画、営業、研究、開発、設計、製造、技術、購買、品質保証、
検査、出荷、人事、総務、情報、輸送、アフターサービスなど)、ISO9001では
必要なプロセスと言っていますが、それらを管理しようとするものです。

日本では、40年前ころ水野滋博士(東京工業大学1989年故人)が唱えた
体系(システム)的思考が同様な考えです。
「部門間の約束事を決めるのが“しくみ”、すなわちシステムである。(中略)営業部門の
業務分掌に、ユーザーの要求品質の収集・伝達という営業としての重要な品質保証業務を
明確に記載しておくことと、営業部門から設計部門への伝達方法を定めておかなければ
ならない。このような部門間の連携と協力についての約束事を決めたものが体系(システム)
である。」 

■□■ プロセスマネジメント ■□■

プロセスマネジメントも標準化をベースに考えられている管理手法です。
ハーバード大学のマイケル・ポーターは、30年前ころ “部門間の連携と協力についての
約束事” のことを、全体最適(オプティマイゼイション)という概念で説明し、
プロセスにおいては部分最適(サブオプティマイゼイション)を超えて全体最適を
組織全体に適用しなければならないと説いています。

ミシガン大学のラムラー博士とブラーシュ博士は、1990年発行の「Improving Performance」
において、この全体最適を組織においてどのように実現すべきであるのかを説明しています。

ラムラーとブラーシュによると、総ての組織は、

1.組織レベル 
2.プロセスレベル 
3.業務レベル

の3つの階層に分けて考察するのがよいとしています。
そして、この3つの階層ごとに、それぞれ1目標、2計画、3マネジメントの3つを決めます。

従って、全部で9つが決められますが、これらをどのように管理するのかを詳しく説いています。
プロセスマネジメントを論じていると、最後にぶつかるのは評価の問題です。
評価指標が明確でないプロセスマネジメントは香りのしないコーヒーみたいなものです。
評価指標の問題は、プロセスフローにおけるプロセス移行の責任権限の問題、ひいては
コミュニケーション(打診、依頼、受理、委託、受託、協調、命令、確認、承認等)の問題
につながっていきます。

標準化は階層間、例えば組織レベルとプロセスレベル、あるいはプロセスレベルと業務レベル
との間のコミュニケーションの問題の行き違いをできるだけ少なくすることが肝要です。
すべてのことを標準化することはできません。
要点を単純化、単一化し、残った部分は部署間、階層間のコミュニケーションによって
隙間を埋めることが重要です。

品質不祥事に思うー標準化について4 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.175 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について4 ***
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どんなものも時間の経過とともに朽ちていくと言います。
権力をはじめ、組織のガバナンス、コントロールなどは時間の経過とともに
必ず劣化していきます。
昨今の名だたる大手企業によるデータ改ざんなどの品質不祥事もそのような
劣化が多くの組織で起きていたのでしょう。

しかし、この流れは早く止めなければなりません。
もう一度品質保証、品質管理についての基本に立ち返りたく、最初は標準化
ということについて考えたいと思います。

今回はあるBメーカーの例で、標準を守ってルールどおり業務を遂行することを
考えたいと思います。

■□■ 標準類を読み風土を保つ ■□■

組織が比較的新しいうちは、トップのリーダーシップのもと「決められたことは
必ず守る」ことが徹底されていますが、年月を経るにつれて徐々に徹底は風化
していきます。10年、20年経ち、人が変り、製品が変り、設備が変っていくと、
いつの間にか「決めたことを守る」ことが保てなくなります。

組織風土の劣化と一口でいうのは簡単ですが、その原因はいろいろ多岐にわたり
ます。もっとも本質的な原因を上げるとすれば、「慣れ」に伴う「慢心」であると
思います。慢心しないようにする為には、繰り返し教育するしかありません。

次の例は、Bメーカーの従業員が入社してから退社するまで、いつ「標準書」を
読むべきかを規定した例です。

・入社時、新人教育の中で、組織全体の理解のため
・配属時、OJT指導の中で、自分の業務理解のため
・業務遂行時、正しい業務実施のため
・問題発生時、部署内、部署間で問題解決のため
・昇格時、責任権限の確認、正しい業務実施のため
・手順書変更時、最新の状態の維持
・内部監査時、監査員として監査実施のため
・内部監査時、被監査者として事前準備のため

■□■ 標準を実行する活動 ■□■

標準通り実行するには、標準通りに仕事をしたことを記録に残るようにする
などの工夫が必要になります。
Bメーカーでは、工夫の一つとして「QC工程表」を作成しています。

QC工程表は、製造・サービスのプロセスを明確にし、そのプロセスを標準化
していくことにより作成しますが、通常次のような手順で作成します。

1.工程フローチャートの作成
2.管理特性の決定
3.特性要因図の作成
4.工程に関係する人員、組織とその業務内容
5.前後工程との関係の明確化
6.工程に関係する技術標準、作業標準の整備
7.QC工程表の作成

QC工程表作成には、従来からあるいろいろな技術的な実績、新たに必要となる
工程解析の結果等が活用されます。

1の工程フローチャートの作成では、例えばハードな物の製造に当たっては、
原料、材料、副原料、部品、工程中の半製品、製品の流れを示す他に、工程中の
管理特性、測定個所、検査個所等を記すとよいでしょう。

サービス提供でも考え方はまったく同じです。
例えば、教育訓練サービスでは、教材、講師、設備、音響、映像、食事提供の流れを
示す他に、教育訓練中の管理特性、モニタリングタイミング等を記すとよいでしょう。

■□■ QC工程表の作成と記録 ■□■

QC工程表は、1の工程フローチャートを根幹として作成されますが、製品・サービス品質
が設計仕様に適合しているかを確認するために、材料・部品の供給から完成品として出荷
されるまでのすべての工程を図示し、各工程の管理項目、管理方法等を一目瞭然にわかる
ように一覧表に表現します。

QC工程表に盛り込まれるべき主な項目は、次のようなものです。

1.工程フローチャート
2.部品名
3.管理項目
4.管理水準
5.管理帳票(管理図、チェックシートなど)
6.データの採取や記録採取や記録担当者
7.データサンプリング方法
8.設備や測定治具
9.管理状態の判定方法
10.異常時の処置ルール、処置責任者

そして肝心なことは、「行ったことを記録する」仕組みを入れ込んでおくことです。
QC工程表に記録欄を作り実施した結果を記録するようにします。

品質不祥事に思うー標準化について3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.174 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について3 ***
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品質不祥事は今に始まったことではありません。
最近では、確か2000年から2005年くらいに懸けて大手企業で頻発しました。
なぜその時の教訓が活きなかったのか、これは深刻に捉えなければならないと
思います。
それにしては、日本社会の捉え方は軽すぎると感じるのは私だけでしょうか。

品質保証の基本に標準化という概念があります。
今回はA銀行という仮想の組織を例にして、標準文書の削減に取り組む方法を
考えてみたいと思います。

■□■見直しされたものを標準として規定 ■□■

標準化された仕組みでしばらく業務を推進すると、改善したいことが出てきます。
見直しをどの位の期間を置いて実施すればよいかは組織によって異なりますが、
3,4年に一回は全面的な見直しをしたいものです。

まず、既存の標準文書をチェックしましょう。
そしてさまざまな帳票類の見直しにまで踏み込んで業務そのものを見直しするのが
大切です。

たとえばスタッフの仕事は、一般に定期業務と不定期業務とに分けることが
できますが、まずは定期業務の見直しからスタートするのが常套です。
職場の全員に、まず担当している仕事を分解してもらい、それぞれの単位業務に
ついて次の質問をしてみます。

a.その仕事はやめられないか。
  やめたらどんな影響が出るか。
  形式的にやっているだけではないか。
  相手はそれをちゃんと利用しているか。
b.やり方を変更できないか。
  もっと簡単にやることはできないか。
  効率化する方法にはどんなものがあるか。
  IT化することができないか。
c.重複していることはないか。
  他部門でも同じ仕事をしていないか。
  統一することはできないか。

■□■ 見規定文書の見直し ■□■

組織のなかには、定款、株主総会、取締役会規則、あるいは就業規則などを定めた
基本規定に始まって組織規定から部門規定まで、経営、労働組合、関連会社、
安全衛生、処遇(賃金、退職金)、福利厚生、開発、品質と組織活動のあらゆる面での
規定が存在します。まず、これらの諸規定の見直しから始めます。

そのためには基本規定は別として、組織規定、部門規定について既存の標準文書を
一覧表にまとめてみたらよいでしょう。
まとめ方はいろいろありますが、文書類をすべて一箇所(例えば、体育館のように
広い場所)に集めて関係者で再認識してみると、10年も前に制定されたまま
放っておかれたり、既に現実には不必要になったものが出てきて驚かれると思います。

■□■ 帳票の見直し ■□■

効果のあるのが帳票類の見直しです。帳票類が増加する理由には次のようなことが
考えられます。

a.部門ごと類似の帳票が存在する。
b.製品の機種ごとに別の帳票になっている。
c.プロセスごと、部品ごと別の帳票になっている。

では、どのような対策をとればよいのでしょうか。
いろいろ対策になることは考えられるのですが、次のようなことを基本に帳票類の
種類の削減をはかったらどうでしょうか。

a.部門ごとに類似の機能をもった共通帳票に統一する。
b.製品機種、プロセス、部品などに共通の帳票にする。

■□■ 事業再編に伴う見直し ■□■

標準文書の整理で忘れてならないことが事業の再編です。
事業の縮小に伴い不要となる標準文書は沢山あります。
事業を拡大する時に標準文書が増えることをポジティブとすると、ネガティブな
局面での規定類の整理について考えなければなりません。

事業の再編という大きな変化ではなく、商品ラインアップの変更という日常的な
変化においても規定類の整理は忘れられています。
組織の運営を20年位のスパンで見ると,商品ラインアップは随分変わっている
はずです。
過去の商品に関する標準文書をそのままにしておくと、文書体系はあってない
ようなものになってしまいます。

品質不祥事に思うー標準化について2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.173 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について2 ***
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今起きているデータ改ざんなどの品質不祥事は、日本の製造業の基盤の劣化を
現していますが、なぜそのような劣化が起きたのかは今後の検証を待たなければ
ならないと思います。
要因がどこにあろうとも、日本が長年にわたって築いてきたTQM(TQC)が揺らいで
いることは確かです。

もう一度品質保証、品質管理についての基本を認識したいと思い、まずは標準化
ということについて考えたいと思います。
今回はA銀行という仮想の組織を例に取り上げて標準化について考えてみます。

■□■ 蓄積されたノウハウを規定化 ■□■

社内業務の標準化の推進について、ある組織(A銀行)を上げて説明したいと思います。
最近では、日本の国内就業人口の7割を超える人がサービス業に就業しているとのこと
ですが、銀行業務の標準化について考えてみたいと思います。
A銀行は、標準文書を次のように定めています。
                                 
Q:基本マニュアル:業務の進め方を包括的に規定した最上位の標準文書。
T:規定文書:すべての部門が、業務の実施に当たって守るべき手順を定めた文書。
S:作業標準書:(例)貯蓄預金、ローン・融資、年金相談、為替業務、証券信託代理、
投資信託、融資先審査、資金運用などの単位作業ごとに作業標準を定めた文書。
K:記録:保管しておくべき記録の一覧

上記の例は単純化していますが、規定文書は組織業務の骨格を決めている文書ですので
それ程多くはなく、その下位文書となると多くの組織は数百を超える文書を持っています。
なぜかというと、過去50年あるいは100年の間に増え続けた文書を捨てないからです。

■□■ 文書管理規程 ■□■

A銀行では、標準文書を管理するために「文書管理規定」を定めています。

1)文書の承認
2)文書の見直し、更新、再承認
3)文書識別番号管理
4)文書の読みやすさ
5)外部文書管理
6)廃止文書管理

などが決められています。
しかし、標準文書は増え続けるばかりです。いまや誰も幾つ文書があるかさえも知りません。
それは、6) 廃止文書管理に決められた文書を捨てることを実施しないからです。

    ■□■ 規定文書 ■□■

    A銀行には規定文書が次の30種類あります。

    ・定款
    ・株主総会規定
    ・株主管理規定
    ・取締役会規定
    ・組織規定
    ・業務分掌規定
    ・就業規定
    ・賃金・退職金規定
    ・関連会社規定
    ・人事規定
    ・考査規定
    ・契約管理規定
    ・融資先審査規定
    ・現金等取扱保管規定
    ・顧客管理規定
    ・顧客セキュリティ管理規定
    ・システム管理規定
    ・顧客相談管理規定
    ・購買管理規定
    ・内部統制規定
    ・内部監査員資格認定規定
    ・不適切サービス管理規定
    ・文書管理規定
    ・品質記録取扱規定
    ・教育訓練規定
    ・設備管理規定 
    ・是正・予防処置規定
    ・労働安全・環境管理規定
    ・福利厚生規定
    ・組合規定

    これは仮想な組織の単純な例ですので、実際の組織運営にはもっと多くの
    規定文書があると思いますが、あったとしてもこの2、3倍が限度であろうと
    思います。

    ■□■ 記録文書 ■□■

    A銀行は、記録文書についても「品質記録取扱規定」にどんな記録を取り、
    保管するのかを規定しています。

    1)保管記録一覧
    2)保管責任者、保管期間
    3)定期的見直し、不要品質記録の廃棄

    これらの3要素が記録管理の要点です。
    A銀行が保管している記録は次の20点です。

    ・融資記録
    ・取引先評価記録
    ・紙幣管理記録
    ・契約書
    ・顧客コードナンバー表
    ・商品コードナンバー表
    ・窓口業務記録
    ・顧客セキュリティ記録
    ・購買注文票
    ・考査記録
    ・顧客相談記録
    ・新商品売上記録
    ・校正記録
    ・内部監査記録
    ・マネジメントレビュー記録
    ・品質目標記録
    ・品質マネジメントシステム計画記録
    ・教育訓練記録
    ・是正・予防処置記録
    ・日常点検シート

    記録の数についても、実際はより多くのものがあるでしょう。
    しかし、これも2,3倍の数に留まるのが一般的でしょう。

    組織の標準文書が数百もあると聞きますと、組織の規模にもよりますが、
    半分以下に整理することが必要であると思います。
    最近はITにより文書管理している組織がほとんどですが、多くある
    文書類に埋没して必要な文書が見つけ出せない組織も多いと聞きます。

品質不祥事に思うー標準化について | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.172 ■□■    
*** 品質不祥事に思うー標準化について ***
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昨今の名だたる大手企業によるデータ改ざんなどの品質不祥事が連続して
起きていることで、日本の今後に不安を覚える人は私だけではないと思います。
もう一度品質保証、品質管理についての基本を認識したいと思い、まずは
標準化ということについて考えたいと思います。

■□■ かならずバラツク ■□■

製品・サービスは必ずバラつきます。これは製品・サービスを実現する人、
設備、材料、やり方等がバラつくからです。
しかし、この「バラつき」は管理することによって最小限にすることが
できます。このバラつきを最小限に管理する最も効果的な方法が標準化で
あるといわれてきました。

標準化は、ある問題に関する与えられた状況で「最適な程度の秩序を得ること」
を目的に、共通すること、かつ繰り返すことのための“規定”を決める活動
である、とISOでは説明しています。

もっと分かりやすくいえば、標準化とは“自由に放置すれば、多様化、複雑化、
無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること”ということです。
標準化には“規定”を決める活動と、規定されたことを守って実施する活動の
2つがあります。 

■□■ 標準の種類 ■□■

標準は次の4つに分類することができます。

1.社内標準
組織内で制定され、実施適用されるもの。
品質マニュアル、作業標準、技術標準、設計標準、各種手順書、指示書、設計図書
などがある。

2.団体標準
学会、工業会などの団体で制定され、実施適用されるもの。
JSQC(日本品質管理学会規格)、ASME(アメリカ機会学会規格)、ASTM(アメリカ材料
試験協会規格)、MIL(アメリカ国防省軍用規格)、UL(アメリカ保険業者安全規格)
などがある。

3.国家標準
国の中で制定され、実施適用されるもの。JIS(日本工業規格)、JAS(日本農林規格)、
BS(イギリス規格)、ANSI(アメリカ規格)、DIN(ドイツ規格)、CSA(カナダ規格)
などがある。

4.国際標準
 国際的に制定され、実施適用されるもの。ISO、IECなどがある。

■□■ 標準化の2つの活動 ■□■

標準を作成する活動は、2つのレベルの活動に分けられます。

1.これまでに蓄積された製造又はサービス提供の条件を標準に規定する。
2.見直し、是正処置等の結果得られた製造又はサービス提供の条件を標準に規定する。

1のレベルは、今までの実施方法を確認し、やり方の統一を図るものです。
やり方がバラバラでは、多様性の調整、両立性、互換性、安全性等が確保できません。
標準化されれば「バラつき」を抑えることができますし、効率も高まります。
しかし、今までの実施方法を踏襲している限りにおいては、その方法が一番良いと
確認できているわけではありません。場合によっては、すでに「過去」の標準と
なってしまっているという危険性を孕んでいます。

2のレベルは、標準化の内容を吟味して、現時点ではこの標準化された方法が
最良であると確信できるものです。言ってみれば、現時点で最適な標準であり、
標準作業において考えられる要素のすべて、人、機械、部品そしてやり方などを
有効に組み合わせたものです。

■□■ 2つのレベルの特長 ■□■

1のレベルにおいては、活動を構成する要素のすべてが相互に適切につながって
いないと効率的な製造又はサービス提供はできません。したがって、もし「標準作業書」
が実態と異なっているとすると、最初から大きな問題を孕んでいることになります。
どんな標準も常に内容の吟味が必要であり、問題の解決を図りながら継続的に改善をして
いかなければならないものです。

2のレベルは、長期のスパンでみると困難を伴う活動です。
なぜかというと、今回は最善であるという確信をいだける方法を標準化できたとしても、
今後とも常に最善であることを追求するにはそれなりの資源が必要になるからです。
さらに、最善であると確信するには何を基準にすればよいかも永遠につきまとう課題です。

1.2両者に必要なことは、決めたことは必ず守る活動をいつの時代にも継続して行って
いくことです。

■□■ 標準化に関するJIS規格 ■□■

標準化に関しては、JIS Z 8002:2006 (ISO / IECガイド2) にその目的が説明されています。

1.多様性の調整
大多数の必要性を満たすように、製品(サービスも含む)、方法等のサイズ・形式を、
最適な数に選択すること。

2.両立性
特定の条件の下で、複数の製品(サービスも含む)、方法等が、相互に不当な影響を
及ぼすことなくそれぞれの“要求事項”を満たしながら、共に使用できるための適切性。

3.互換性
ある製品(サービスも含む)、方法等が、同じ“要求事項”を満たしながら、別のものに
置き換えて使用できる能力。

4.安全性
容認でない傷害のリスクがないこと。

以上。