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品質マネジメントシステムの再設計その3 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.36 ■□■

*** 品質マネジメントシステムの再設計その3 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回も前回に引き続き、「品質マネジメントシステムの再設計」と
 いうことで発信させていただきますが、

組織のなかでは、組織を構成する全員が、
 システムの運営推進者であるのですが、組織の皆さんは、
  現状のQMSにどんな問題点を感じているのでしょうか?
あるいは、
  QMSに対してどんな期待とニーズをもっているのでしょうか?

■□■ デルファイ法 ■□■ 

システムの期待とニーズを把握するには
 いろいろな方法がありますが、
  その中の一つにデルファイ法があります。

デルファイとは、
 古代ギリシャの有名なアポロン神殿のあった地名ですが、
 アメリカ合衆国の研究機関ランドコーポレーションが開発した
 予測法のことをいいます。

複数の専門家がそれぞれ独自に意見を出し合い、
 それを相互に参照し再び意見を出し合うという
  作業を繰り返し行うことにより意見を収斂させ、
   予測確度の高い見通しを得るという方法です。

この他にも
 今後のことを予測し行動を起こすベースを決める方法として、
  いろいろなものがありますが、

デルファイ法を含めいずれも、如何に意見を多く交換して、
 もっとも「ありえそうな」結論を得ることが
  これらのツールを活用するときのポイントになります。

■□■ ブレインストーミングの4原則 ■□■

有名なツールに「ブレインストーミング」があります。

 これは1941年にアレックス・F・オズボーンによって考案された
 課題抽出方のひとつで、集団発想法、ブレストともいいます。

 ① 判断・結論を出さない。

 参加者は自分の意見を自由に言うことができます。
  意見に対しての批判は慎まなければなりません。
   判断・結論をこの場では出さないことが原則です。

 ただし、意見をなお拡大するような発言はよいとされます。

  たとえば「機械を買う」という意見に
   「予算が足りない」と否定することは
    慎まなければなりませんが、

   「予算が足りないが、どう対応するのか」と
    可能性を広げる発言は歓迎されます。

 ② 思いつきで粗野な考えを歓迎する。

 誰もが思いつきそうなアイデアよりも、
  奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視します。
   新規性のある考えはたいてい最初は笑いものにされますが、
    そうした提案こそを重視します。

 ③ 質より量を重視する。

 様々な角度から、できるだけ多くの考えを出します。
  新規性のある考え方・アイデアはもちろん、
   一般的な考え方・アイデアなど
    「そんなことは当たりまえではないか」と
      思えるようなものでも、何でもよく
       あらゆる考え方を歓迎します。

 ④ アイディアを結合し発展させる。

 別々のアイデアを一緒にしたり一部を変化させたりすることで、
  新たな考え方・アイデアを生み出していきます。
   他人の意見に便乗することが推奨されます。

■□■ グループインタビュー ■□■

グループインタビューはいろいろな目的に使用できますが、
 一般には次のようなことに用いられます。

 ① 関心のあるテーマについて一般的な背景情報を把握したい。
 ② 新しい考え方や概念を作り出したい。
 ③ 新しい製品、サービス提供、プログラム推進等の
    基本的な課題を明確にしたい。
 ④ 関係者がどのようなニーズ・意見を持っているかを
    明確にしたい。

グループインタビューの特徴には次のようなものがあります。

 ① 日常生活の延長線上での「現実そのまま」の感覚、考え、
    情報に接近することができる。
 ② グループメンバーの構成にもよるが、 
    メンバー同士が刺激を受けながら本質に近いところで
    話をすることができ(インタビューの力量にもよる)、
    本音が聞ける。

グループインタビューにおいては、
 グループダイナミクスの理論を知っているとよいと思います。

  「社会心理学の父」と呼ばれたクルト・レヴィン(故人)は、
   リーダーシップとその影響を研究しました。

   1939年、集団での意思決定の研究から
  「集団の力学的性質及び変化」を観察し、
   グループには次の3つの力が働いているとしました。

ダイナミクスの3要素とは、以下の3つです。

      個人、

      個人間、

      環境        

すなわち、人の集団は個人、個人間、環境の3つに
              大きく影響を受けるということです。

■□■ 期待とニーズ ■□■

肝心の「QMSへの期待とニーズ」のそのものについては
 来年、新春号でお話させていただきます。

今年一年皆様と「つながり」ができましたでしょうか?
 来年はさらに「つなげる」努力をしたいと思っております。

平林

品質マネジメントシステムの再設計その2 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.35 ■□■

*** 品質マネジメントシステムの再設計その2 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

中小企業では、
  社長の発案でQMSの構築、
   ISO9001認証プロジェクトを始めるケースが多いようです。

しかし、社長によっては、自分で発案したにもかかわらず、
 自身がQMSを使うユーザーでもあるという認識が薄いようです。

せっかくQMSという製品を買うと決めたわけですから、
 その製品の機能をフルに発揮させて、
  自分のニーズを満たすという発想になれば
   よりよくQMSの成果を享受できるはずですが、
    そうでない社長が世には多く存在すると感じます。

もっとも、社長自身がQMSの構築、ISO9001認証プロジェクトを
 発案する場合は、まだ社長の推進力に期待することができると思います。

問題なのは、中規模以上の組織に多く見られる、
 部下から具申されてはじめて重い腰を上げる社長のケースでしょう。

■□■ QMSのユーザーとしての社長 ■□■

社長にQMSのユーザーとなってもらい購入意欲を持っていただくには
工夫が必要です。

社長が会社を経営していて一番優先的に考えていることは
「利益を上げること」です。

したがって、利益を上げるというニーズを満たしてくれる製品には
強い購入意欲を持ちます。

会社組織の中には、まだまだ多くの無駄が潜んでいます。

組織はいろいろなリスクに晒されていますが、一番大きなリスクは
市場で発生するクレームでしょう。

会社利益増大に貢献する要素には、他にも次のようなものが考えられます。
     ・新製品の市場への投入
      ・市場シェアーの拡大
       ・目標の貫徹
        ・課題(再発防止など)の解決
         ・顧客満足の向上
          ・社会からの信頼性向上
           ・優秀な人材の確保
            ・教育訓練の効果的運用など

組織にはまだまだ利益を増大させるチャンスがたくさんあります。
  これらを社長に「見えるようにする」ことが第1点です。

第2点は、
  QMSが利益を増大させることに
    有用な道具であることを理解してもらうことです。

ここでは、第1点目の
  「利益を増大させるチャンスがたくさんあることを
    見えるようにする」ことを述べたいと思います。

■□■ 利益増大チャンスの「見える化」 ■□■ 

いろいろな利益増大チャンスの中にQMSに一番近いものが
  「品質コストの削減」です。

QMSは上述の「新製品の市場への投入」~「教育訓練の効果的運用」
  利益増大チャンスにも有効ですが、品質管理に関係するQMSを
    売り込もうとするならば、品質コストの削減が一番説得力あると思います。

一般に「品質コスト」と総称されていますが、
  品質コストは大きく分けて維持コストとロスコストの2つに分けることができます。

  さらに維持コストは
      ①検査コストと
       ②品質管理コストに分けることができます。また、ロスコストは
        ③工程内損失コストと
         ④市場クレームコストに分けることができます

■□■ ロスコストの削減 ■□■

ロスコストの削減とは「不良品の撲滅」です。

不良品と一口でいっても、
 社内で発見される不良品から
  社外で発見される不良品、
   さらに分けると外注会社で発見される不良品、
    社内中間工程で発見される不良品、
     社内最終検査で発見される不良品、
      流通過程で発見される不良品、
       顧客先で発見される不良品など

  いろいろな場所で不良品は発見されます。

まずは、品質コストの現状がどうなっているか調べましょう。
  この調査は「金額」で表します。

見える化とは見る人の頭脳に入りやすい手法をいいますが、
  ここでは金額をグラフなどにして表現するとよいでしょう。

「ロスコスト」の半減が
  社長をQMSのユーザーにする「セールストーク」であったとしても、
  第2点目である「果たしてQMSはロスコスト削減に効果がある」のでしょうか。

多くの人が多分あると答えるでしょうが、
 QMSが「ロスコスト」の半減に効果がある、
  もうすこし大きく捉えて経営目標とQMSとはどのような関係になっているかを、
   組織の多くの人に理解していただく必要があります。 
                                      
   (次回へ続く)

品質マネジメントシステムの再設計 | 平林良人の『つなげるツボ』

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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.34 ■□■

*** 品質マネジメントシステムの再設計 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

品質マネジメントシステム(QMS)についてその有効化の議論が盛んです。

「ISO9001(QMS)を構築してもその効果がはっきりしない。」

「ISO9001を維持していくコストを考えると
       現状のままでは継続していくことに疑問がある。」

このように感じている組織が増えているようです。

これにはいろいろな要因が絡んでいます。

いままでは「どうして効果が出ないのか」を議論してきましたが、
これからは「どうすれば効果が出るのか」を議論していくべきであると思います。

■□■ 現状は・・・ ■□■

ある講習会で「本業が忙しくてISOをやっていられない」という声を聞きました。
この嘆きは多くの組織の事務局の共感を呼ぶものであるようです。

ISO9001、あるいはISO14001の事務局の声として、
       現状を的確に表している声であると思います。

この声の後ろには、QMSが日常業務の中で必要なものとして
       扱われていないということがあると感じます。

本来日常的業務の中で機能しなければならないQMSが、
 現実には無視され、認証審査のときだけ思い起こすように
  システムが見直しされるという現実があるようです。

それでは、「どのようにすれば効果が出るのか!」・・・への答えは、
ズバリ、「効果の出るQMS(品質マネジメントシステム)を作ること!」につきます。

何か禅問答のように聞こえるかもしれませんが、考えても見てください。
  QMSのユーザーは誰でしょうか?
    ユーザーの期待とニーズ(必要性)は何でしょうか?

    当初のQMS設計においてのインプットは何だったのでしょうか?

QMSは、果たしてこのような問い掛けをして設計/構築されてきたのでしょうか?

      もし答えが「NO」であるならば、組織は「QMSの再設計」をすべきです。

ISO9001:2008序文0.1一般には
「品質マネジメントシステムの設計及び実施」について次のような記述があります。

■□■ ISO9001:2008序文0.1一般 ■□■ 

「品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略上の決定によることが望ましい。
 組織における品質マネジメントシステムの設計及び実施は、
 次の事項によって影響を受ける。

  a) 組織環境、組織環境の変化、及び組織環境に関連するリスク
  b) 多様なニーズ
  c) 固有の目標
  d) 提供する製品
  e) 用いるプロセス
  f) 規模及び組織構造」

序文においては「設計:design」という用語が使われています。
        この設計という作業が重要なのです。 

           設計にもいろいろなものがあります。

すなわち普通の製品(たとえば携帯電話)で言えば、
  まったくの新製品であったり、
    派生製品であったり幾つかの種類があります。

QMSという製品はすでに市場に出ています。
  最初は興味をもつユーザーがいたのですが、 
    徐々に価値が失われ今やユーザーが離れてしまい
      市場から撤退するか問われている状況にいます。

■□■ 誰がQMSのユーザーか? ■□■

「誰がQMSのユーザーか?」
   これは根源的な問いかけです。

QMSをひとつの製品と見立てた場合、
QMSという製品を使用するのは組織の全員です。

すなわち、QMSの購入者、ユーザーは組織の人です。

通常の製品・サービスにおいてユーザーは
  製品を使用したくて購入するわけですが、QMSという製品は
    ユーザーに強い購入意欲を感じさせるものではないようです。

    強い購入意欲を感じるどころか、そもそも組織の人は
    QMSを購入したいと思っているのでしょうか。

QMSの購入者、ユーザーは「組織の人です」・・・といいましたが、
  実は外部にもQMSのユーザーはいます。

  子会社、協力会社の人たちは組織のQMSに基づいて仕事をしていますから、 
    QMSという製品を使用しています。

また、組織の製品・サービスを買ってくれる顧客も間接的ではありますが
  QMSのユーザーといえます。      

(次回へ続く・・・平林)