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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.38 ■□■
*** 品質マネジメントシステムの再設計その4 ***
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テクノファ代表取締役の平林です。
今回も引き続き、
「品質マネジメントシステムの再設計」ということで発信させていただきます。
ある中小企業で調査をさせていただきました。
現在のQMSに対してどのように感じているかということ、
どんな期待とニーズを持っているかということをです。
■□■ 社長の期待は利益を上げること ■□■
社長に自社のQMSに対する期待とニーズは何ですか?
一つだけ上げてください、と質問したところ帰ってきた答えは、
ずばり「利益を上げること!」という極めて当然な回答でした。
「利益を上げる」とは、
品質管理的に言えば「製品の顧客価値を上げる」ことになると思いますが、
「製品の顧客価値を上げる」ことと「利益を上げる」こととは
比例関係にあると思います。
では、どうすれば「製品の顧客価値を上げる」ことができるのでしょうか?
これまた当然の話ですが、次のような項目が羅列されました。
● 顧客の欲しいものを把握する。
● 組織を取り巻く事業環境の変化を把握する。
● 社会(行政、マスコミ、消費者、取引先他)の要求を把握する。
● 顧客の欲しい製品(サービスを含む)を開発し、市場に投入する。
● 顧客とのコミュニケーションをよくする。
● 顧客リレーションにおいてベストプラクティスな手順を採用する。
● 製品クレームを出さないようにする。
■□■ 部長の期待は計画どおりに仕事が進むこと ■□■
さらに調査を進め、部長にQMSに対する期待を聞きました。
この会社の部長(管理者)の期待は、
「業務目標が計画どおりに達成されること」
であることが分かりました。
それでは、どうすれば部長の期待は達成されるのでしょうか?
上げられたのは2つだけでした。
● 業務目標が適切である。
● 業務目標を計画どおりに実施する。
しかし、この2番目の項目は更に下位項目に展開されました。
- 責任権限を明確にする。
- 社内コミュニケーションをよくする。
- 手順を決める。
- 全員の力を終結する。
- 品質クレームを出さない。
- 効率的で効果的なプロセス管理をする。
- ミス、不具合をなくす。
■□■ 担当者の期待は楽になること ■□■
さらに調査を進め、
「担当者(一般従業員)のQMSに対する期待」を聞きました。
一般従業員の期待は、
「効率よく(楽に)仕事ができること」でした。
それでは、
「どうすればその期待は達成されるのか」については、たくさん上げられました。
● 手順書が必要な業務を明確にする。
● 手順書を確認する。
● 手順書を見える化する。
● 業務に必要な力量、設備、測定、管理項目を決める。
● 教育訓練をする。
● 標準化を推進する。
● 手順の遵守を徹底する。
● 根本原因を調査する。
● 是正・予防処置をとる。
● プロセスのインプット、アウトプットを決める。
● プロセスの繋がりをチェックする。
● プロセスのアウトプットが後のプロセスで使われているか調査する。
● 社内情報伝達の仕掛けを明確にする。
● 社内メール/ホームページを有効に利用する。
● 指示命令系統を常に明らかにしておく。
■□■ どれも当然な期待 ■□■
QMSに取り込まれている全員の期待を確認すればいいのですが、
代表して社長、部長、担当者など3階層の
《QMSに対する期待》を確認し、整理してみました。
どれもみても当然の期待であり、要求でありますが、
これを実現するのは「期待している貴方である」というメッセージが
実はこの調査で一番重要なことです。
QMSは組織に属する全員の努力によって維持がされ、
日々改善がされていくという極めて当たり前のことを
「QMSへの期待は何ですか」という質問によって、
自覚してもらいたいわけです。
ただ、ここで「極めて当たり前のこと」と言えるには、
一つだけ重要な前提条件が存在します。
それは組織のQMSが
「期待に応えることができる構造になっている」ということです。
■□■ 期待とニーズを設計する ■□■
QMS再設計で重要なことは、この期待が結果として得られるように構造にすることです。
繰り返しになりましが、ISO9001:2008序文には次の一節があります。
品質マネジメントシステムの採用は,組織の戦略上の決定によることが望ましい。
組織における品質マネジメントシステムの設計(及び実施)は
次の事項によって影響を受ける。
a) 組織環境、組織環境の変化、及び組織環境に関連するリスク
b) 多様なニーズ
c) 固有の目標
d) 提供する製品
e) 用いるプロセス
f) 規模及び組織構造
皆さんの組織のQMSは a)~f) を考慮して設計されているでしょうか?
もし答えがNOだったら、QMSは再見直し(再設計)されるべきでしょう。