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生物多様性 | 平林良人の『つなげるツボ』

■□■ 平林良人の『つなげるツボ』 Vol.10 ■□■
 
      *** 生物多様性 ***

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テクノファ代表取締役の平林です。

今回は生物多様性について話をさせていただきます。来年2010年
には名古屋においてCOP10(第10回締約国会議)が開催される
予定です。

では宜しくお願いいたします。

■□■ 生物多様性とは-1992年環境サミット ■□■

1992年、ブラジルのリオデジャネイロでは有名な「環境サミット」
が開催され、約180カ国の首脳が集まりました。その時の
アウトプットの一つとして有名なのが「気候変動枠組み条約」
です。

現在、世界をあげて地球温暖化防止(CO2排出削減など)に
ついての議論が活発ですが、ことの発端はこの環境サミットに
あったのです。

この気候変動枠組み条約の陰に隠れてあまり知られていません
でしたが、もう一つ締結された条約が「生物多様性枠組み条約」
です。

1992年に締結されたこれらの条約をフォローする国連主催の
会議がCOP(Conference Of Parties)と呼ばれる一連の国際会議
です。

気候変動枠組み条約は今年COP16と呼称されていますから、今年
で16回目の会議になるわけです。生物多様性枠組み条約のほうは、
開催回数が少なかったため来年でCOP10です。

■□■ どうして生物多様性は必要か ■□■

一昨年、アメリカ発の世界金融不況が始まったとき、経済の世界
にも多様性が必要だといわれたものでした。

アメリカ一国の強者が築いた経済世界は、最後はあまりにも脆弱
(ぜいじゃく)であることが露呈してしまいました。

自然の世界でも強者だけでは成り立ちません。世界には3000万
種ともいわれる多様な種が存在し、お互いに影響を与えながら
全体のバランスをとり、結果、自然界を営々と維持しているのです。

例えば、次のようなことがあります。弱肉強食の世界では強者が
弱者を糧にして生きていますが、弱者も強者を糧にしています。
ライオンの死骸を最後にきれいにしてくれるのは、微生物であったり
します。

自然界はお互い持ちつ持たれつつ、バランスを取りながらその
存在を維持しているのです。バランスを取るためには多様性が
必要です。

■□■ 生物多様性とビジネス ■□■

企業組織にとって生物多様性はどんな関係があるのでしょうか。
2007年に環境省がアンケートをとった結果、約70%の日本の
組織は「生物多様性は自分たちのビジネスには関係がない」と
答えています。

私はこの数字をみて、これは面白い数字であると思いました。
多くの企業が生物多様性について興味を持っていないのです。

もし、興味を持たざるを得ない時代が来るとすると、先に理解を
深めていた企業の方がいろいろな意味で有利になると思った
からです。

■□■ 国の施策 ■□■

国としてはどんな施策を考えているのでしょうか。
生物多様性の保全と持続可能な利用に関わる国の施策の目標と
取組の方向を定めた「第三次生物多様性国家戦略」が、平成19年
に閣議決定されています。

次の4つの基本戦略を掲げています。
1.生物多様性を社会に浸透させる。
2.地域における人と自然の関係を再構築する。
3.森・里・川・海のつながりを確保する。
4.地球規模の視野を持って行動する。

■□■ ABSとは ■□■

生物多様性の議論にABSという言葉が出てきます。

ABSとは“Access and Benefit Sharing”の略で「アクセス便益
共有」と訳されています。
これは生物の遺伝についての概念です。

近年、生物の遺伝は人為的に加工できるようになりました。
遺伝子を操作すること(アクセスすること)で多くの便益を手に
入れることが可能な科学的現実があります。

そのため、先進国は開発途上国の種(遺伝子)を金に糸目を
つけず買い漁る傾向が強くなっています。

ABSはそうした傾向に対して、一つの原則を明確にしたものです。
すなわち、遺伝子を操作して得られた便益は、その種を提供した
開発途上国を決められた比率で分けなければならないという
原則です。

この原則は、気候変動枠組み条約のCDM(Clean Development M
echanism:
クリーン開発メカニズム)とよく似ています。CDMにおいても先進国は
開発途上国で手に入れたCO2排出権を独り占めすることは
許されず、開発途上国とある比率で分けなければなりません。

このように、気候変動枠組み条約と生物多様性の二つの条約は、
それらの考え方でお互いに繋がっています。