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■□■ 平林良人の『つなげるツボ』Vol.71■□■
*** 附属書SL究極のキーワード***
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■□■附属書SLのエッセンス■□■
附属書SLについての説明を続けてきましたが、
組織にとっての価値は、次の2つの要求事項を徹底して実行することで
得られるのではないかと思います。
1)4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
組織は,次の事項を決定しなければならない。
- XXXマネジメントシステムに関連する利害関係者
- その利害関係者の要求事項
2)4.1 組織及びその状況の理解
組織は,組織の目的に関連し,かつ,そのXXXマネジメント
システムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える,
外部及び内部の課題を決定しなければならない。
1)のキーワードは「利害関係者の要求事項」、2)は「組織の能力」です。
■□■なぜ、4.2から始めるのか■□■
なぜ、ここでは4.1でなく4.2から始まるのか
疑問を抱かれるかもしれませんが、附属書SLは外からの視点、
すなわち「社会から組織への要求」の観点から書かれています。
しかし、組織における附属書SL活用を論じる場合は
組織の視点から説明することから4.1と4.2の順序が逆転すると
理解してください。
組織は、まず「利害関係者」すなわち「顧客」は誰か、
その要求事項は何かを考えなければなりません。
ここで顧客だけが利害関係者ではないことは承知の上で、
あえて利害関係者=顧客として話を進めさせていただきます。
「利害関係者=顧客の要求事項」の核心は、
「顧客価値」であると識者は論じています。
飯塚東京大学名誉教授は、「超ISO企業研究会」で組織経営者はまず
「顧客価値」を考えなければならないと説明しています。
■□■顧客価値とは何か■□■
文字通り「顧客が欲しいと感じる価値」のことです。
顧客が欲しいと感じない物は売れません。
文芸春秋2月号には「ソニー、パナは何を作っているのか」という
吉川先生(東京大学ものづくり)の話として次のような記事が載っています。
「テレビで言えば、高画質の4Kや三次元が、
他の追随を許さない技術であることは確かだ。
ではなぜ売れないのか。
答えは簡単。誰も要求していないからである。」
誰も要求していない、は極端にしても、市場と連動していないのに
技術者は「イノベーションを起こした」と勘違いしているのです。
続いてこんな話も掲載されています。
「マーケティングしているのに、なぜ売れないのか。
日本企業は高品質の製品をどう売るかに終始し、
マーケティングを”市場調査をして、統計分析する”
ことぐらいにしか考えていない。」
■□■顧客価値をどのように把握するか■□■
更に次のような話に続いています。
「国内市場だけを見ていても勝負にならないことは、明確である。
経済産業省の分類によればアジア新興国15か国の人口は30億人であるが、
その内ボリュームゾーンである中間層は8億人である。
将来は人口20億人に近づくアフリカこそが市場の中心になる。」
「一刻も早くアフリカ人が何を欲しているか、研究を始めるべきである。」
■□■顧客価値は誰が顧客であるかから分析する■□■
明らかに日本メーカーは20年前の成功体験から抜け出せていません。
相も変わらずテレビの鮮明画像を競っているが、
ボリューム市場はそんな価値を求めていないというのです。
日本国内市場で商売をするならばそれで良いが、
それでは世界の家電メーカー競争に勝てません。
ターゲットとする顧客の見直しから始め、
その顧客が「何を求めているか」を研究することを
早急に行わなければなりません。
■□■鍵のかかる冷蔵庫、金色のエアコン■□■
鍵のかかる冷蔵庫、金色のエアコン、
いづれもいま東南アジアで売れている商品であるといいます。
メイドのいる東南アジアの富裕層では、冷蔵庫からモノが無くなることから
「鍵のかかる冷蔵庫」に価値を感じるそうです。
ステイタスを感じる金色室内エアコンは飛ぶ売れ行きであるといいます。
そこでは日本で常識である白色のエアコンは見向きされない。
一時の流行であるかもしれないが、最初にそれを発売した中国メーカーは
後続の日本メーカーに差を付け続けているのは当然であろうという話です。
■□■2つ目のキーワード「組織の能力」■□■
顧客価値を適切に把握したとして、次に必要なことは
組織能力がその顧客価値を実現させることができるかです。
附属書SLの4.1箇条では:
「組織は,組織の目的に関連し,かつ,
そのXXXマネジメントシステムの意図した成果を達成する”組織の能力”に
影響を与える,外部及び内部の課題を決定しなければならない。」
と要求しています。
新しい「顧客価値」実現に、
現有の組織能力では物足りない現状が多くの組織の実情であろう。
どんなことを実行することで、「意図した成果を達成する”組織の能力”」を
組織にもたらすことができるのか、
「超ISO企業研究会」では実現のためのツールを公開しています。
(つづく)