ISOマネジメントシステムの審査員、内部監査員の方々にお届けしております。

ISO9004:2018には次の記述があります。

9.2 人々
9.2.2 人々の積極的参加
人々の積極的参加は,利害関係者への価値を創造し,提供する組織の能力を強化する。組織は,組織の人々の積極的参加のためのプロセスを確立し,維持することが望ましい。全ての階層の管理者は,人々がパフォーマンスの改善及び組織の目標の充足に参画するよう奨励することが望ましい。
組織は,組織の人々の積極的参加を向上させるため,次のような活動を検討することが望ましい。
a) 知識を共有するプロセスの開発
b) 人々の力量の活用
c) 個人の能力開発を促すための技能認定制度及びキャリアプランの確立
d) 人々の満足の度合い,並びに関連するニーズ及び期待についての継続的なレビューの実施
e) 指導(mentoring)及びコーチングのための機会の提供
f) チームによる改善活動の促進

出典 経済産業省 JISQ9004:2018

個人の能力開発にはcarrier development plan(キャリア開発計画)が必要で、個人一人一人に焦点を当てた能力開発はISOに言われなくても今の時代多くの企業が取り組んでいる課題であると思います。個人の能力開発を実践的に学習しようとすると、carrierとは何かから始まり、自己理解、他社理解、コミュニケーション、アサーテイションなどいろいろの行動心理につながる科目を勉強することになります。できればそのうちのいくつかはケースステディを通じて実践的に学ぶことが学習効果の高い研修になります。テクノファがキャリアコンサルタント養成講座に辿り着いたのは、ちょうどそのような訓練コースを開催したいと模索していた時期でした。

それは2004年の頃でした。既にキャリアコンサルタント養成講座は12機関で行われていましたた。しかし、当社の担当事務局に調べてもらうと必ずしもチャレンジできないことはない、まだ参入のチャンスはありそうだということでした。そうは言っても先行する各社さんが種々築いているノウハウは我々には窺い知れないものでしたので、社会に貢献できるのか正直戸惑いもありました。しかし、組織のマネジメントシステムの中心にいるのは人であり、その組織の多くの人は世の中の激しい変化に対応できずにいる現状をなんとかしたいとの「思い」は強いものでした。

テクノファはISOマネジメントシステムを中心に研修をやってきましたので、どちらかというと、人事労務範囲や管理系の部分には弱いものですから、まず講座を運営するには、専門家の力が絶対必要だと思いました。そしていろいろな人的チャンネルの中から元モービル石油人事部長であり、その後キャリアカウンセラー分野で功績のあった横山さん(故人)に巡り合いました。

しかし、当時、横山さんは厚生労働省のキャリアコンサルタント能力評価試験の判定委員をされており、利害相反の関係から協力はしていただけませんでした。しかし、ありがたいことに、まさしく「求めれば与えられる」を地に行ったかのように、今野さん(故人)という当時のキャリアカウンセラーの世界での新進気鋭の講師に巡り合えることができました。その頃、我々は新規コース(ISOマネジメントシステム)の開発を半年くらいで行っていましたので、今回も「半年で何とかならないでしょうか」と単刀直入に申し上げたところ、今野さんから「半年では無理。最低限1年はかかります」ということで、その後、今野さんにはテクノファの顧問になっていただきご協力いただくことになりました。 それから、毎月1回、今野顧問に参画いただいて、コース開発と能力評価試験の準備を行っていきましたが、厚生労働大臣認定キャリアコンサルタント養成講座実施機関の認定を受けるまでには、今野さんがおっしゃたようにちょうど1年かかりました。

ここからはテクノファの厚生労働大臣認定キャリアコンサルタント養成講座の考え方、特徴を述べていきたいと思います。

1.キャリアコンサルタントは、人のキャリアに関わるプロフェッショナルとして、「キャリア」とは何か、「カウンセリング」とは何かについての正しい認識と十分な専門知識を併せ持った人材でなければ、相談にくるクライアントの真のニーズに応えることはできないと考えます。

2.キャリアコンサルタントには非常に高いカウンセリングの専門性と適性、そして経験が求められますが、その第1歩としてのキャリアカウンセリングの技能を学んでいただきます。

3.テクノファのミッションは、「キャリア」と「カウンセリング」に関する正しい認識と十分な専門知識を併せ持ち、クライアントが能力開発と自立的意思決定ができるように支援する能力を有する「キャリアコンサルタント」を一人でも多く輩出することにあります。

4.コースの特徴は「内的キャリア※」に重点を置いている点です。肩書社会である日本におけるキャリア開発に必要な内的キャリアについての理解を深める講義、演習を特徴としています。

5.養成コースはインタラクティブ(双方向)な講義、ケーススタディー(事例研究)、ワークショップ(演習)といったアクティブ(参加型)なコースを通じて内的キャリア認識を深めるように設計されています。

6.養成コースの中で合宿形式のCDW(キャリア開発ワークショップ)を実施しています。CDWそのものがカウンセリングプロセスになっており、このプログラムの中で受講者には自己理解を深めていくプロセスを体験していただくことになっています。このプロセスを通じて自分を理解することが出来て、初めて他の人たちはどう考えているのだろうか、クライアントの心中はどのようなものかを客観視することができるようになります。

(注)内的キャリアは人の心にある「やりがいなどの仕事の価値観」を意味する言葉、それに対して外的キャリアとは学歴、肩書、社会的地位などをいう。

(つづく)