044-246-0910
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ISO9001:2015には次の要求事項があります。
5 リーダーシップ
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般 トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)を負う。
b) 品質マネジメントシステムに関する品質方針及び品質目標を確立し,それらが組織の状況及び戦略的な方向性と両立することを確実にする。
c) 組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする。
d) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進する。
e) 品質マネジメントシステムに必要な資源が利用可能であることを確実にする。
f) 有効な品質マネジメント及び品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性を伝達する。
g) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にする。
h) 品質マネジメントシステムの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ指揮し,支援する。
i) 改善を促進する。
j) その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう,管理層の役割を支援する。引用 JIS 品質マネジメントシステム-要求事項 JISQ9001:2015
ISO9001はトップマネジメントの「リーダーシップ」を求めていますが、経営の神様と言われたピーター・ドラッカーは、一般的にリーダーについて興味ある要約をしています。
(1)フォロワーがいてこそのリーダーであることを知っている。
(2)称賛されもしないし愛されもしない。
(3)とてもよく目立ち、模範を示す。
(4)リーダーシップを責任と見なしている。
(5)いくつかの鍵となる問いかけをすることができる。
・何をやる必要があるか?
・違いを生み出すために私は何をすることができるか、あるいは何をすべきか?
・組織の使命とゴールは何で、何が業績と結果の構成要素となるか?
(6)有能なリーダーの特徴は、常に「ミラーテスト」を行う、すなわち、鏡の中にいる人物は、自分がなりたいと思い、尊敬し、信じられる人物であるかと常に自問している。
また、世の中にはいろいろなリーダーシップの要約があり、以下何人かの先見者たちによって示されたリーダーの資質を掲げます。
Peter Senge 組織には複数のタイプのリーダーがいる。第一線のリーダーは、具体的な結果の心配をする。幹部的リーダーは、継続的な学習が可能な経営環境づくりに責任を持つ。そして内部ネットワーカーは、コミュニティ作りを行う。
Sally Helgesen 世界は「相互接続した部分からなるクモの巣」として見ると、「地位を伴わないリーダーシップ(nonpositional leadership)」や「地位を伴わないパワー(nonpositional power)」が生まれる。
Gifford Pinchot リーダーは人々が粛々と「なすべき仕事を果たすこと」に取り組むことを援助しながら、従業員に心を配り、公益に奉仕を続け、使命と価値観の共有を通じて、コミュニティが創り上げられることを援助する。
Edgar Schein リーダーとは組織に生命を吹き込む人のことで、組織を離陸させ、組織文化を創造し、文化を維持し、チェンジ・エージェントとして活動する。リーダーは偶然に変化を起こすことはできないが、絶え間ない学習を通じて変化を導き出すことを援助することができる。
John Work リーダーシップは、社会的に意味のあるビジョンと、「終わりなき社会的課題」を持つ社会の改善へと続く変化の上に築かれなければならない。このようなタイプのリーダーシップは、民族的感受性、職場のビジョン、これまでとは違う新しい雇用プロセス、多様な労働力の効果的な活用、そして組織とコミュニティのつながりに責任を持つ。
Rosabeth Moss Kanter リーダーは、コスモポリタンであり、統括者であり、外交官であり、受粉媒介者(cross-fertilizer)であり、深い思索者であらねばならない。リーダーは硬直化した役割やステレオタイプを打破し、リスクを恐れず新しいパターンを導入し、他の者たちのパートナーとならなければならない。
Richard Leider リーダーシップは、「YOU INC(あなた株式会社)」からできている。言いかえると、すべての変化は「自己変化(self-change)」である。自己変化によって、感情的に豊かになる。変化は、セルフ・リーダーシップと自己の内部を見つめることを要求する。
Beverly KayeとCaela Farren リーダーは、ファシリテ一夕ー、評価者、予測者、アドバイザー、支援者となることによって、人々がキャリアを開発するのを援助することができる。
出典 サニー・S・ハンセン著作「Integrative Life Planning」福村出版
これらのリーダーシップの要約にはいくつかの共通するテーマが見られます。
・多くの人たちが、組織が変化―変質さえも―するパワーについて、ほとんど理想的と言えるほどの熱烈さで語り、良きリーダーは、組織の変化をどのように起こすかを知っていると信じている。
・何人かは、コミュニティの形成、社会の改善、そして共通の利益のために働くことについて関心を示している。
・階層序列的で競争的な組織から、継続的な学習を中心に据えた、民主的な価値観がよくわかる、協力的で協働的な組織へ移行する必要性について、顕著な意見の一致が見られる。
・ほとんどの人が、組織があらゆる多様な人的資源を活用しようとするならば、新しい形のコミュニケーション、雇用方針、報償制度、ビジョンが必要であると信じている(しかしながら執筆者たちのなかに、女性と民族的マイノリティはほとんどいなかったということは指摘しておくべきだろう)。
・コミュニティ、コミュニティの形成、架け橋の形成、つながり、パートナーシップの形成というテーマが数編のエッセイに見られる。
また、女性と男性というジェンダーは依然として、リーダーシップのスタイルに極めて大きな影響を及ぼしています。
(1)ジェンダー役割の社会化、
(2)組織における選抜と能力別のコース分け、
(3)対人関係における認知と役割期待、
(4)個人におけるキャリア願望と選択である。
Rosener(1990,1995)によれば、1990年代のフォーチュン500の企業のなかで、女性はミドル・マネジメントの33%を占めているが、トップ・マネジメントに関しては2%しか占めていなかった。また、管理職や役員での女性と男性の給与の違いは、以前よりも縮まっているとはいえ、今なお実質的な違いが残っている。Rosenerはまた、男性の方が女性よりも周囲と打ち解けていると感じており、また男性の役員は女性の役員よりも、物事を他の同僚たちと同じように感じる傾向があるということを見出した。言い換えれば、依然としてトップの座は男性のために確保されているということのようである。
企業で働く女性の多くが、ダブル・スタンダードを我慢しなければならず」成功するためには人一倍仕事をしなければならなかった。女性が間違いや失敗を犯すと、容認されにくい。巧妙な差別を報告する女性もいる。何人かによると、「それは、聞いてもらえない、アイディアが実行されない、会議から除外される、昇進が遅い、といったことである」。また、女性をラインに就けることを躊躇する企業もある。そのような企業は今でも、女性は子どもを持つと辞めていくので女性にお金を使うことは危険性の高い投資だ、と確信している。実際、男性の役員の95%が子どもを持っているのに対して、女性の役員は30%のみである(Rosener,1995)。
男性と女性のどちらが良い組織リーダーになるかは、まだはっきりしていない。多くの研究が、男性と女性のリーダーシップのスタイルに違いはないということを示している。たとえば、カリフォルニア大学アーバイン校のRosener(1990)による男性と女性のリーダーについての研究では、女性の方が職場における人間関係の摩擦を減らすことがうまくできるとは言えないということ、そして女性の方が思いやりがあり、人道主義的だとも言えないということを見出した。リーダーシップが必要な状況において、彼女らは男性に劣らず主導的であり、ゴールを設定し達成することができた。今女性たちは、女性として共有してきた経験から開発してきたスキルと能力を活用することによって、女性の第2の波が経営トップへと向かっている。出典 サニー・S・ハンセン著作「Integrative Life Planning」福村出版
女性がこれまで男性のリーダーが用いてきた「命令と統制」の方法から離れ、「双方向リーダーシップ(interactive leadership)」と言われるスタイルに向かっていることが重要な点です。女性は、カリスマ性、対人関係スキル、ハードな仕事、人脈などを含めて、彼女らの地位を自分たち自身の努力の結果として獲得したものであると考えています。双方向のリーダーシップは以下の4点が構成要素として含まれていると説明されます。
1.1人ひとりとの相互作用が、全員にとって肯定的なものにするよう努める。
2.参加を促す。従業員には、自分にパワーがあると感じさせ、WIN-WINの状況にいるということを実感できるようにする。
3.権力と情報を共有する。他者の意見を取り入れるために、継続して会議を開く。
4.フォロワーを元気づけるため、他者の自尊心を高め、仕事に熱中できる状況を創り出す。
相互作用的リーダーは、グループ・アイデンティティが形成されるように努めます。そのようなリーダーは、称賛を与え、自分の優秀さをひけらかすことはせず、上役風を吹かすこともありませんが、「自分たちを祝福する」パーティーを開くという工夫をします。このような工夫は人間中心で思いやりのある仕事環境の創造にとって極めて有効です。
(つづく)Y.H