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組織の「リーダーシップ」は組織の「文化」と切り離して語れません。リーダーは組織の文化を作っていきますが、同時に組織の文化を壊してもいきます。近代の社会は急激なテクノロジーの進化によって、組織が社会に持続的に存在することを難しくしていますが、近年の生成AIの出現はこの傾向をますます急激にものに変えつつあります。

文化とリーダーシップは,同じコインの裏表であることも学んだ。つまりまずリーダーがグループや組織を生みだしたときに文化の創造のプロセスが開始される。文化が形成されると,その文化がリーダーに対する基準を作り,その結果誰がリーダーにふさわしく,誰がふさわしくないかを決定する。しかし文化のある側面で不具合が生ずると,リーダーシップのユニークな役割が発揮され,既存の文化のなかでうまく機能をしている側面とうまく機能をしていない側面が識別される。さらにリーダーは変化を続ける環境のなかでその組織が存続できる方向に文化的改革と変化をリードする。リーダーにとっての最低限の要件は,彼らが身を置いている文化をしっかり意識していないと,文化のほうが彼らをマネジしはじめるという点だ。文化を理解することはだれにとっても望ましいことであることは間違いない。しかしリーダーが成功を収めるためには文化の理解こそ不可欠なものとなるのだ。

出典 エトガー・H・シャイン「組織文化とリーダーシップ」2012年白桃書房

我々は、生きていく上で無秩序あるいは無感覚なことに対しては不安を感じます。そこで我々は、物事がどう動いているのか、どう動くべきかに対して、一貫した予測可能な見方を築くことによって不安感を取り除こうとします。組織の文化はこのような過程を経て作られていきます。組織に属する人々が組織の環境を理解し、多くの人が好ましい、過ごしやすいと努力する中で形成されるのが望ましいのですが、必ずしもそうならない場合が多いのです。それは「好ましい」ことを誰が定義するのかで決まってきます。そこにリーダーの存在、影響、行動などが強く影響します。さまざまな要素を結びつけ、あるレベルに文化を定着させようとすると、より大規模に向けてのパターン化(型にはめる)、あるいは統合化が必要になってきます。文化とは、習慣、風土、価値観、行動等をひとつに凝縮された統一体へ入れ込むことを意味する言葉です。このパターン化は、我々が「文化」と呼ぶことの中核を占めるもので、我々を取り巻く環境をできる限り安定化し、秩序立ったものにしたいという人間の欲求から生まれ来ています。

グループの文化は次のように定義できる。「文化とはグループが外部への適応,さらに内部の統合化の問題に取り組む過程で,グループによって学習された,共有される基本的な前提認識のパターンである。このパターンはそれまで基本的に効果的に機能してきたので適切なものと評価され,その結果新しいメンバーに対し,これらの問題に接して,認識し,思考し,感じ取る際の適切な方法として教えられる」(Martin,2002)。
この定義によると,文化はパターン化と,統合化を重視したものになっている。しかしグループによっては,このような方法で文化を進化させる学習経験をへてこなかったところもあるだろう。たとえばリーダーやメンバーに大規模な変化が生じたことが考えられるし,あるいは,グループのミッションや主要な責任が変化してきたかも知れない。グループが依存してきたテクノロジーが大幅に変化したかも知れない。さらに,そのグループがいくつかのサブグループに分裂し,各サブグループが独自の文化を作り上げて,ジョアン・マーティンとその同僚が名付けた差別化,あるいは分裂化した文化に至っているかも知れない。

出典 エトガー・H・シャイン「組織文化とリーダーシップ」2012年白桃書房

我々は、ほかの信条や価値観と混ざり合う形で自分たちの信条や価値観が機能しており、その結果、対立や曖昧さが常に存在する状況に置かれているグループ、組織、社会を知っています。文化という概念が有用性を備えているとすれば、安定性、一貫性、意義に対するわれわれのニーズの産物である信条や価値観にもわれわれの関心を寄せるべきだと思います。文化の形成においては、つねにパターン化と統合化の両方の方向が目指されるのですが、グループ/リーダーによっては、その経験の積み重ねの歴史が、不明確で不明瞭な文化を築いてきたと思われる組織を数多く見てきています。

(つづく)Y.H